3. 心臓弁膜疾患と航空医学適性に関する研究
─環境変化が心血行動態に及ぼす影響について─
埼玉医科大学
尾本 良三
「心臓弁膜疾患と航空医学適性に関する研究」:環境変化が心血行動態に及ぼす影響について
埼玉医大第一外科
尾本 良三
松村 誠
要旨
航空機乗員の運動負荷、絶食時における心血行動態、脳血流について検討した。若年健常男性6例を対象とし、絶食時と食後で低圧実験室においてハンドグリップ運動負荷を施行。超音波・ドプラー診断装置、自動血圧計を用いて心機能、血行動態、頸動脈血流を連続記録した。減圧方法は航空自衛隊航空医学実験隊の低圧実験装置を使用し、室内気圧を5分で0.69気圧(高度10000feet相応)に下げ、15分間維持した後大気圧に戻した。低圧低酸素状態では絶食時、食後のいずれも酸素飽和度、血圧は低下、心拍数、左室駆出率、心拍出量、脳血流量は増加したが、その程度は絶食時の方が大きい傾向を示した。また、ハンドグリップ負荷により左室駆出率は低下、血圧、心拍数、心拍出量、頸動脈血流は増加し、その程度は絶食時に大きい傾向を示した。航空機内での運動負荷は地上よりも心拍出量、脳血流に大きく影響を及ぼし、しかも、その程度は絶食状態の方がより著明である。本研究結果は航空機乗務に際して、予め食事や飲料水を適当量、摂取しておくことの重要性を示すものであり、航空機乗員の航空身体検査基準の見直し時の参考となる。