従って、コントラスト感度は、ランドルト環視標を用いた通常の視力検査より、実際的な形態覚が評価可能であり、より詳細に形態覚の変化をとらえることが可能である。そこで今回は、Vector Vision社製のCSV1000およびVistec社製のMultivision Contrast Tester MCT8000を用いて、コントラスト感度の加齢による変化について検討したものである。加えて、回答に要する時間についても年齢別に検討した。
その結果、50歳代までは年代による有意な差はみられなかったが、60歳代以降では、特に中〜高周波数領域において50歳代以下の年代と比較して、有意なコントラスト感度の低下が検出された。また、いずれの測定結果においても標準変化が小さく、また、その反応時間においても加齢により延長することが示された。従って、視機能の加齢変化を検査する一方法としてコントラスト感度の測定は有意義であることが示唆された。
V. まとめ
視覚の加齢性変化の検出法として、Moreland等色値の測定およびコントラスト感度の測定法を採用し、加齢に伴う変化について検討した。
1. Moreland等色の中央値および等色幅について年代別に測定した結果、加齢に伴って等色の中央値は短波長(青)側へ移行し、等色幅は増加する傾向がみられたが、統計学的に有意差は認めなかった。
2. コントラスト感度について年代別に測定した結果、60歳代以降において、中〜高周波領域感度およびその反応時間ともに有意な低下が検出された。
以上の結果、コントラスト感度測定は従来の航空身体検査に採用されていない検査法であるが、短時間に加齢変化をとらえる一検査法として有意義であることが示唆された。