1. 操縦室内の音声聴取特性とその改善対策
産業医科大学
牧嶋 和見
操縦室内の音声聴取特性とその改善対策
産業医科大学
牧嶋 和見
吉田 雅文
山岸 豪敏
清水 隆
要旨
航空機の安全運航には、乗員相互あるいは地上との円滑な意思の疎通が必須である。航空機乗員においては、操縦室内雑音下での語音聴取、とりわけ交信の公用語である英語語音の正確な受聴が重要と考えられる。
これまで我々は、日本人が母国語でない英語語音の聴取をどのように行っているかという点に着目し、航空機乗員を想定した研究を進めてきた。平成9年度には、基礎研究として防音室内のS/N比の高い条件下で、正常聴力の日本人に対し日本語と英語の語音聴力検査を行った。その結果、日本語と比較して英語の語音聴取域値は約15dBの上昇、語音弁別能では約10%の低下を認めた。さらに英語の語音弁別能や異聴の傾向は、英語経験による個人差が大きく、騒音環境下ではこれらの個人差が一層顕著になることが予測された。平成10年度は、騒音が与える日本人の英語の語音聴取への影響について調べる目的で、正常聴力の日本人に対し、雑音負荷時の英語語音明瞭度の測定を行った。被験者は、大学生レベルの英語学習経験があり、現在も英語学習を継続する正常聴力の日本人とした。負荷雑音には、白色雑音、加重雑音、B-767機の操縦室内雑音の3種類を用い、実験に先だち高速フーリエ解析により、これらの周波数分析を行った。検査語音にはCID W-22listを用いた。いくつかのS/N比の組合せで、オージオメーターを介して検査語音と負荷雑音をミキシングしたものを聴取させ、語音明瞭度の測定を行った。