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目を閉じてこの文章を噛みしめると涙が溢れ出る、一年生冬の松葉杖登校の途中、足の痛みに泣いて座り込んで、父兄の方の電話連絡で迎えに行った事が何度あっただろうか、こんな素晴しい通知表が他にあるだろうか、よかったねKちゃん、よく頑張ったねKちゃん、これからはその名の通りどんどん幸せになって行くんだよ。

 

徳に守られる

三年生一学期も後僅かと言うある日、一学年上のR君と偶然帰りが一緒になった。優れた体格のR君が路上の小石を蹴ったら遠くに飛んだ、それを見たKちゃん、松葉杖の身を忘れて我もと小石を蹴ったその瞬間、身は宙に浮いて顔から落ちた。泣きもしない、動きもしないKちゃんを心配そうに見守るR君、と突然Kちゃんが大声上げて泣き出した。見れば口は血塗れて前歯が二本抜け落ちている。R君はその前歯を拾って自分の帽子に入れるやいなや、一目散に帰って来た。「お父さん!Kちゃんが大変だあっ」その後からKちゃんが、窓ガラスが割れるような大きな声で泣きながら帰って来た。

 

 

 

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