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翌昭和58年春になると目立ってよく勉強に興味を覚え、眼を輝かせて、私の近くにやってくる少年に気づきました。名前を「クエン・ホア」15歳、彼だったのです。

難民達のほとんどは親子、兄弟姉妹、叔父甥、の肉親グループでしたが彼は一人でした。単身者はほんの数人だったようです。

4月の統一地方選挙が始まり、私は支持者の一人として選挙事務所の炊事の手伝いに行っていた昼近く、夫からの電話で、ベトナムの子供が一人でやって来たと言うのです。帰ってみてびっくり、バスを二回も乗り継ぎ、傘も持たずに濡れてやって来たのです。お風呂にいれて、昼食を食べながら彼の積極的な行動をほめてやりました。

私が夕方から園に行くことを知って、一人で来たとぽつりぽつりと言うのでした。

それ以来、毎週朝からやって来ては、勉強したり、畑仕事を手伝ったり会話も一段と上達して、いい子どもだと感じたものでした。学校に行きたいかと尋ねると、行きたいとすぐ返事が返ってきました。

 

 

 

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