里親事業推進のための提言
平成11年9月30日
里親推進事業検討会
はじめに:
近年わが国の児童及び家庭をめぐる状況の変化は著しく、これに対応すべく児童福祉の抜本的な見直しや法制度の改革がすすめられている。とくに1947(昭和22)年に制定された児童福祉法が半世紀ぶりに大きく改正され、これまでの行政のシステムの変革やすべての子育て家庭への支援体制の強化が本格的にすすみはじめた。
全国里親会では、従来から里親制度に関する具体的な改善や強化の施策について、要請や意見を示してきた。とくに、1996(平成8)年には、「里親制度の改善に関する提言」を示し、とくに里親について児童福祉法に独立の条文を設け、その名称、定義をはじめ懸案となっている里親に関する制度の整備を求めた。しかし、里親制度の運用状況をみても、社会的養護に占めるその割合はむしろ低下していると言わざるを得ない状況が続いている。この度の児童福祉法の改正においても、残念ながら改正が見送られている。
本格的な少子社会を迎えつつある今、あらためて家庭養育の重要性が指摘されている。従来の児童福祉の一環として里子の養育に専心するとともに、広く家庭における子育てを支援することにも視野を広げ、子どもたちの最善の利益を図り、子どものニーズに応え得る里親事業を推進することが、求められている。
このため、全国里親会から委嘱を受けた本検討会は、これまでの里親制度や運用状況を見直し、21世紀に向けてあらたな里親事業を推進するための重要な方向や課題について、協議、検討を重ねてきた。そして重要な事項として6項目をあげ、その主旨、課題等について以下に提言として示すこととした。その内容は、従来からの里親の機能を強化するとともに、従来からの里親イメージを越えたあり方にも踏み込むものとなっている。この提言が、里親関係者、行政機関、関係諸機関・団体において積極的に討議・検討される契機となり、今後のわが国の里親制度及び里親事業の強化と進展につながることを願うものである。
I 子どものニーズに応える多様な「里親」のあり方
1 主旨
里親の役割は、その家庭において実の子以外の子どもたちをケアするところにある。その役割は先ず、わが国の社会的養護の体系のなかで果たされてきた。その里親の役割は常に最も重視されるべきものであり、その充実を図ることの重要性は言うまでもない。しかし、里親の役割を従前のような古典的、固定的なものに絞るのではなく、今日及び将来にわたる多様な子育てのニーズに応える役割、とくに子どもが求めている生活上、発達上のニーズに応え得るさまざまな役割にまで拡大していく必要がある。今後は、この両者を考慮した家庭的ケアの充実と拡大を図ることが求められる。
このため、従来の社会的養護にかかわる役割を果たす長期里親等とともに、今後一層重視される子育て支援の役割を果たす一時里親や保育里親などが求められる。
2 里親の種類と役割
次の二つの機能の充実強化と拡大を図るため、以下のような具体的な種類と役割を考慮すべきである。
第一に、現行の社会的養護の機能の充実・強化として、長期里親、短期里親、専門里親(乳幼児里親、思春期里親、障害児里親、情緒障害児里親等)、親族里親(キンシップ里親)、ファミリー里親などがある。〈註〉
第二に、子育て支援を中心にとくに今後の機能の拡大として、一時里親、ショートステイ里親、保育里親などがある。〈註〉
3 課題
〈1〉 これらの機能に応じた里親の類型化とその利用のあり方について検討することが必要である。