これをリボンやモールで飾り付けて、賑々しくまちを行進する。この婚礼では、楽団を乗せたトラック、紅旗、アウディ、サンタナが用意された。
無償で手伝う彼らの他に、一日あたり五十元(約六百円)ほどで雇われる一群の人びとが果たす役割も大きいことを忘れてはならない。まず、祝宴の支度をする八人のコック。そして、式の節目に音楽を奏でる八人編成の楽団。トランペット、シンバル、大太鼓、小太鼓、アコーディオンなどで編成された楽団は、主にマーチを演奏する。葬儀に呼ばれる楽団がチャルメラや胡弓を中心とし編成で、伝統的な音楽を奏でるのと対照的だ。そして、カメラマンも一人雇われる。近頃では、ビデオ撮影を頼むこともある。
これらの人びとが三日間にわたる婚礼の助演者である。(図3])
◎紅の舞台をつくる◎
H氏の家では、婚礼の前日から準備に忙しい。普段の色彩に乏しい住まいが、刻々と紅色の装飾に彩られていく。紅の提灯、紅の旗。そして紅色の紙と墨が大量に用意される。これにめでたい言葉、魔よけの呪文、式次第を書き付けるのは総関の仕事だ。これらを、家族が決められた場所にとりつけていく。どのような演出がほどこされているか、H氏の家に向かう最初の曲り角から見てみよう。最初の曲り角には、大きな紅い旗が一対はためいていて、この先に祝い事があることがすぐわかる仕掛けになっている。曲がり角を西へ折れると、紅い提灯と旗、そして喜聯の貼られた大街門に行き当たる。大街門から振り向くと、そこの壁にもめでたい言葉を書き付けた紙が貼られている。中庭に入ると、右手の壁に婚礼を手伝う係の名前が書かれた紙。正房の入り口脇には福を呼び、災いを避ける呪文が書かれた妨忌単という紙が貼られている。そして、これらを書いた総関のいる部屋には礼房と書かれているし、夜になって、花嫁の荷物が運ばれた後には、新婚の部屋のドアの外側に花嫁道具の目録が貼られる。このように紅色一色になった中庭に、婚礼の儀式をおこなう祭壇がもうけられる。「」の書かれた挿屏がテーブルに置かれ、その上には喜花という、やはり「」をかたどった饅頭が飾られる。