これは「大黒」、「大国主命」などという名称が多く、鯛の図柄がほどこされた恵比寿の御幣と一緒に神棚に供えられ、「恵比寿・大黒」として祀られる事例も少なくない(写真4]5])。
2]また、「大黒」、「大国主命」という名称は枡の図柄の御幣にもみられ、この形状の御幣を「田の神」あるいは「枡」と称している場合も多い(写真6])。
3]狐の図柄は「稲荷」、あるいは「明神」の御幣で、片幣束の形式をとるものもある。これは、明神を祀る屋敷神に供えることが多い(写真7])。
4]手桶の図柄の御幣は「水神」と呼ばれている。(写真8])なお、水神の御幣では井桁を表現したものもある(写真9])。これらは井戸などに供えられる。
5]田畑を耕す農具である馬鍬が表されているのは「蒼膳神」の御幣である。「家畜神」と称しているものもある(写真10])。
6]正月を迎えるために祀る「年神」、「歳徳神」の御幣は必ずしも各神職間において共通性があるわけではない。しかし、剣を突き出したり、シデをさげたり、五色の紙を用いたり、他の御幣とは趣を異にしているようだ(写真11])。
7]「山神」の御幣はその名の通り山が表現されている(写真12])。
8]船の図柄の御幣もある。これは「ふなだまさま」、「宝船」などと呼ばれ、ほとんどが沿岸地域にみられるものである(写真13])。
9]燃えさかる炎をあらわしたものとして「火神」がある。鏡の部分に火を表現したり、剣をつきだして火を表している(写真14])。
10]雷の図柄の御幣は「雷神」である。これも「火神」同様に鏡の部分や突き出た剣によって雷光を表現している(写真15])。
11]伝統的に作られてきた御幣ではなく、神職の創意工夫によって考案された特殊な御幣もある。これは県北部沿岸に位置する気仙沼市にある古峰神社の「十二支の御幣」などがあげられる。伝承切紙研究者の一人、故熊谷清司氏から触発を受けて作られたものだという。同神社ではこのほかにも切り透かし形式の「透かしの十二支」も作られていたが、現在では氏子への頒布を行なっていない(写真16])。
12]紙注連形式から御幣形式へと変化したものもある。例えば県北沿岸部の唐桑町早馬神社では紙注連形式の「恵比寿・大黒」を頒布していた。これを略したかたちの「恵比寿・大黒」が約二十年ほど前から作られるようになった。(写真17]18])