日本財団 図書館


025-1.gif

9]きじん(中山義弘太夫作)。ヤツラオウの幣とも。

 

025-2.gif

10]ヤギリヤギョウジンの幣(中尾計佐清太夫作)

 

025-3.gif

11]大山鎮めの幣(小松為繁太夫作)。

鳥、四足、蛇、虫など山々に住む生き物たちの姿が刻まれている。

 

これは、いざなぎ流の世界観の重要な部分が、これらの悪霊たちによって占められているということを表している。

それでは、それぞれの種類について、簡単な説明を加えていこう。

注連飾り…祭場を聖域化する注連縄につける幣。縄にはさむしめの子、棚の前方に立てる鳥居幣、床の間の上に飾る鳥居型の切り紙が美しい鳥居しめなどがある。藁に飾る鳥居型の切り紙が美しい鳥居しめなどがある。藁で編む注連縄は七五三の足をつけるが、紙のしめも七五三の足が切られる。

特徴あるのは、よりパワフルな力で祭場を防衛する人形幣である。十二のヒナゴ(コミコ)は、顔が三つずつついた人形幣で、舞台の四方を取り囲む注運縄にそれぞれひとつずつ取り付ける。三体が四方にあるのであわせて十二体。十二のヒナゴの大神様と呼ばれる。祭りを妨害するほかの太夫の呪いや、悪霊から舞台を守るものと言う。天台流という別流派の太夫の切るヒナゴは、二つの顔は外向きに、ひとつの顔は内向きに作って、両方ににらみをきかせるのだと聞いた。

ヒナゴは、愛知県花祭りのヒイナや長崎県壱岐のオキヌなど日本各地にみられる人形幣のバリエーションであり、基本的な作りは同一のようである。このような点からもいざなぎ流と日本各地の民間信仰とのつながりが感じられる。

年末の土用に家々でおこなわれる「すす祓い」(土用祓いとも)に際し家の入口に飾られる「関ざね」と「門(かど)荒神」もヒナゴと類似した幣である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION