神々を招き祀る御幣
山ノ神の集り
年末や正月に山仕事に携わる人々の祭祀に用いられる御幣は、組ごとの場合は、やや大きな幣串を一本立てて、その周りに各戸分のやや小さな幣を置いて、神木や祠、当番宿で神事をいとなむ例が多く、この山ノ神と同系統の荒神を、(註1])豊穣や家内安全の目的で祈る場合も同様である。これが各戸のみで行う場合はやや小さな、長さ四〜五〇センチの幣串を一本立てるところが多い。水神の場合も同じである。(写真1])
だが、地区(旧村落)共同で行う山ノ神祭祀には、きわめて多くの幣をつけた大幣など特色をなすものが多い。おもな例を挙げる。
【事例】島根県隠岐(おき)郡布施(ふせ)村では、四月初丑の日を中心に、いまも村をあげての大山(おおやま)祭りを行う。長さ一〇メートルほどの二本の巨大な葛(カズラ)を山から切り出し、これを二本の山ノ神の神木に巻きつける威勢のよい山祭りであるが、祭りの中心は、帯締(おびし)めというこの葛巻きを伴う神事である。