4・祖先をまつる。写真は、紙銭に火をつけようとしているところ。
初節(前年死んだ人の初めての清明節)には、紙でできた住宅や家財道具の模型を燃やすので、墓地に向かう人たちの中には、色とりどりの模型を持っている人も見かける。
一九九八年の清明節には、七二歳の男性に同行して墓参をした。城内に居住し、靴を商っていたS氏の家は、かつて城の東北約五キロの場所に広大な土地を所有していた。現在は、他人の農地だが、彼の両親の墓は依然としてそこにある。
供え物や線香をつめたバスケットをもって、青々とした麦畑をかき分けながら進むと、墓にたどりつく。まずは、やはり后土へのまつりからだ。埋葬のときと同様の手順で儀式をおこなったのち、故人をまつる。用意される供物は、なかなか豪勢だ。まず、模模が墓参に来ていない家族の分だけ用意される。模模のかたどる動物が家族の性別や年令を代表している。未婚者用には、将来の結婚相手を添えるので二匹の動物がかたどられている。
儀礼の手順は以下のとおりだ。
1道具を並べる…土饅頭前方―紙の上に四個の寿頭を置く。土饅頭上―白い御幣状のものを木の棒にくくりつけたものを立てる。墓参に来た印だということである。土饅頭前方―四種類の料理。土地神の供物が野菜のみだったのに対して、四種類の料理にはぶた肉も含まれる。紙の上に四種類の模模を並べる。
2謝后土…線香をもって三回叩頭し、寿頭の前方に切り離した線香を三本さす。寿頭の手前に置いた紙銭に火を付け、白酒をふりかける
3謝祖先…四回叩頭してから模模の横に切り離されていない線香を三本さす。模模の手前に置いた紙銭に火を付け、白酒をふりかける。おかず、模模を少しずつ土饅頭に埋める。
このように、祖先の住まいである墓においても、まずは后土に保護を願い、毎年の墓参にも礼を欠かさない。(図13]14]15])
生きた人間の住まいも祖先の住まいである墓も、建設するためには土を動かさなければならない。土地の神の怒りににふれないとも限らない。そこで、土地に対する愛着の強い平遥人は、現在でも土地への畏敬の念をこめて礼を尽くしつづけているのかもしれない。
<都市史・建築史研究>