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自然と文化 第62号「瀬戸内を生きた人びと」

 事業名 観光資源の調査及び保護思想の普及高揚
 団体名 日本観光振興協会 注目度注目度5


谷川…村上水軍の中には三つの来島(くるしま)、能島(のしま)、因島(いんのしま)水軍とありますが、そのへんを少し話して下さい。

沖浦…河野家の内紛とも絡んでるのですが、能島と因島は毛利方について反豊臣で行動を一貫するのですが、来島水軍だけが裏切って織田・豊臣に付いてしまうんです。四国征伐の時も尖兵になって薩摩、小田原、それに朝鮮出兵にも参加した。そして姓まで久留島と変え一万五千石の九州の小大名になります。現在、村上水軍会というのがありますが、久留島系は外されています。

谷川…「海賊停止令」に出てくる斎島(いつきしま)の話はどうですか。

沖浦…「海賊行為を禁止したにもかかわらず、まだ出没している」と、秀吉の停止令に名指しで指摘されたのが、大崎下島のすぐ南に見える小さな斎島ですね。宮本常一さんによると斎島の島民は秀吉に虐殺されて、現在の島民は当時の人と全く入れ替わっているというのです。資料はないのですが、どのようにしてこのことを調べられたのか私には分かりません。今は二、三〇人ひっそりと暮らしています。歴史に残る斎島です。斎という地名が面白いですね。

谷川…やはり祭祀と深い関係があるのでしよう。

 

◎家船漁師の技術◎

谷川…瀬戸内の家船の漁民は『浮鯛抄』を持っていてどこへ行っても漁をしてよいというお墨付きを得ていますね。その鯛が浮くことに私は関心があります。『日本書紀』に神功皇后が敦賀の港を出発して長門で仲哀天皇と合流することになっていて、途中、能多之登(のたのと)(渟田門(ぬたのと))を通る場面があります。そこを通ると鯛が船のまわりに集まってきた。そこで酒を注ぐと鯛が酔って浮きあがってきたと書いてある。私は能多之登がどこなのか興味を持っていました。本居宣長の弟子で小浜にいた伴信友という学者が、能多之登を調べたそして木崎幸敦の聞き書きを紹介しています。「常神と丹生浦とのさし出たる岬の間を、むかしの老人の能多之登と云ひし…」と。つまり、地元の漁師は若狭の常神岬と立石崎あたりをノタノトというのだそうです。人々の言い伝えでその地名が残ったのでしょう。瀬戸内ではどういうふうに鯛が浮くのでしょうかと、先日、小坂で会った古老に聞きました。それによると、冬、寒いと海底にいる鯛が上がってくるというのです。つまり浮き袋が調節できなくて浮いてくるのです。若狭の場合は、まどろ鯛といって、暑くて浮きあがって波の上まどろむんです。まったく逆ですね。沖縄では、摂氏10度になると寒くて浮き上がるのです。

沖浦…『浮鯛抄』は誰がいつごろ書いたのかよく分かりませんが、たぶん近世の後期でしょう。木地師も由緒書きを持っています。被差別部落も河原巻物を持っています。これらはいずれも『浮鯛抄』と文体がよく似ています。家船漁民の由来も平家の落武者伝承によっていますね。屋島から平家の落武者の女房が逃げてきて能地にたどり着く。そこで若い漁師と一緒になる。ただその女性は平氏の女官だったから気位が高かった。それで夫と二人で漁をした後、魚を売り歩くわけですが、その「魚はいらんけー」という掛け声が「買って下さい」という感じじゃなかったんです。平家言葉が残っていたと言うのですね。そういうことが書かれていまして、文章もなかなかうまいです。山伏の存在が下層社会では注目されますが、彼らが書いたのかもしれません。島嶼部でも修験者が山にいましたしね。被差別部落の由緒書きの文章もすごいですよ。こういう由緒書きの作者について考えてみるのも面白いですね。

谷川…家船の漁民は小さい民でありながら、万里の波濤を越えて自由なんですね。私たちに一服の清涼剤をもたらしてくれます。

沖浦…私もインドネシアに何回も行ってますが、海民であるバジャウの船に乗せてもらいました。日本の家船にそっくりでした。六畳敷きか八畳敷きの部屋に子供も乗せています。国籍は一応あるのですが、フィリピン、マレーシア、インドネシアの海を自由に行き来しています。

 

 

 

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更新日: 2019年7月20日

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