6]―祭祀を行う王宮付祭官。柱に赤い帯を塗って装飾する。これを神の登り降りする梯子とする解釈もある
御柱建立の儀は、一連のインドラ神祭儀のなかで、もっとも国家の権威が集中する場である。建立の場はマッラ王朝からシャハ王朝が引き継ぎ、現在は国家的儀礼に使用されている旧王宮(ハヌマンドーカ王宮)前広場で、重要な神々の祠堂が立ち並んでいる。
建立に立ち会うのは、宗教的には王より高位にあるバラ・グルジュ(王の導師)と王宮祭官長、占星学者及び政府高官たち。中世のままの剣と銃をもった儀仗兵に守られた“王の剣”は、マッラ王のものであると考えられる。
王宮付祭官二人によって護摩が炊かれ、経典読踊の間にマントラと共に神々が招来される。これが終ると直ちに兵士たちにより、建立が行われる。軍楽隊の賑やかな音楽と、儀仗隊の古式の演奏、時々打ち鳴らされる古式銃の祝砲など、音によって力を与えられた柱が徐々に立ち上って行く様は、雨季明けを祈るにふさわしい晴れやかさに満ちている。御柱が建ち上ると、祝砲とともに参列していた重要人物たちが“王の剣”を先頭に立てて、柱の周りをゆっくり三周する。
主な儀礼が終了した後、周囲に八本の黒木の短い柱が建てられ、竹棒を巡らして結界が作られる。高く聳え立った神木の先端から長いインドラの幢(はた)が吊り下げられ、柱の根元には小さな金のインドラ神像が置かれて、祭場は完成する。