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格子については、町家では格子・細と格子・中は、低町家、高町家ともほぼ同じ割合であった。違いがみられたのは格子・荒で、これは高町家には少しあるものの(3戸)、低町家にのみみられるもの(31戸)といってよい。格子・荒は、塗りこめられた太い格子である虫籠とデザイン的によく似ている。どちらも低町家に存在するという結果から、虫籠と格子・荒は、彦根の伝統的な表構えのデザインであるといえる。建築年代からも、虫籠、格子・荒をもつ町家が江戸期に集中していることが明らかである。(表2-7)長屋では、先に述べたように、虫籠が少なく(3戸)、また格子をもつものもわずかしかない(11戸)。長屋も高町家と同じで、2階開口部が窓になっているものが多い(図2-23)。長屋と高町家は、2階軒高をはじめ、表構えのディテールで共適する部分がたくさんある。高町家は明治から、長屋は大正からその姿をあらわしはじめるので、時期的に重なる部分が多く、よってディテールや軒高に類似性がでるのである。

2-3-2-12 表構えのまとめ

表構えのディテールから得た結果を箇条書にしてまとめる。

(1)町家の間口の平均値は約5間で、長屋の間口の平均値はおよそ3間である。町家の方が長屋より間口が大きい。

(2)2階軒高が4m未満は低町家(低長屋〉、4.5m以上は高町家(高長屋)であるといえる。その境界があいまいなものは、2階の窓の高さがめやすとなる。

(3)袖壁は低町家についている。高町家、長屋にはない。

(4)彦根は低町家、高町家ともにせがい構造のものが多い。長屋にも影響している。

(5〉低町家から高町家に変化するにつれ、2階後室が居室化されている。

(6)現在、町家、長屋の側面はトタンか板になっている。

(7)町家、長屋とも2階壁面の色は、白・黒・土・灰と4つあり、なかでも白が多い。2階壁面が漆喰(塗籠)になっているのは低町家である。

(8)1階開口部の格子・細、中は、町家、長屋ともにみられ、そのデザインは江戸期からのものである。格子・荒は、、低町家しかない。

(9)あまり数は多くないが、竹矢来は彦根の伝統的なデザインである。

(10)2階開口部では、低町家に虫籠が多く、高町家と長屋には窓のものが多い。

(11)塗籠は、建築年代の古い低町家のものである。

 

2-4 町家と長屋の分類

2-4-1 町屋と長屋の評価

町家と長屋の評価これまで述べてきたことから、町家と長屋では居住者の格から家の質において差があるということがわかった。

悉皆調査では、町家と長屋一戸づつについて、「改造」、「メンテナンス」、「質」について5段階で評価した。2以下は調査対象外にしたので、実際は5、4、3の3段階評価である。改造は、5]-1・2階とも改造されていないもの、4]-1階ほ改造されているが2階は昔のままであるもの、3]-1・2階とも改造されているもの、である。メンテナンスは、その家のメンテナンスの良いほうから5]・4]、3]とつけた。質は見た目の印象から、よい家だと思うほうから5]、4]、3]とした。

改造、メンテナンス、質のどれも長屋より町家のほうが評価が高いということがわかる。改造では、町家のほうが1、2階とも手を加えられずに残っているものが多く、1、2階とも改造されているものは長屋に比べて少ない(図2-24)。メンテナンスでも、評価が5]のものが町家では41%であったのに対し、長屋では16%しかなく、町家は家の手入れが良くされているといえる(図2-25)。質では、評価が5]のものが町家26%、長屋8%であったことから、私たちが見ても良いと思う家が町家に多かったといえる。(図2-26)。改造・メンテナンス・質において評価が5]または4]の町家がたくさんあったことから、彦根には良質な町家がたくさん残っているということができる。

 

 

 

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