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c高2階町家

明治に入り、町家の高さ制限がなくなり自由に軒の高い家を建てられるようになった(写真1-12)。低町家でも述べたように、軒高4.5m以上のものを高町家としている。低2階町家と同様に、以降、高町家と呼ぶことにする。

d3階建て町家

彦根で2件だけ見つかった、木造3階建ての町家建築形式を3階建てとする(写真1-13)。

1-1-2-4 長屋について

長屋は都市における借家人住宅で、江戸期から共同住宅として建てられていた。明治期以降でも彦根市にはこのタイプの住宅が多く見られる。外見上は町家とほぼ同じで、道に面しており、異なる点は境壁を隣同士で共有して建っているところである。また、間口が町家より狭いなど、建築物としての質はあまり高くない。ここでは、町家と同じく、a平屋、b低長屋、c高長屋、それに加え今回の調査で見つかった、長屋に塀の付いた、d塀付き長屋寮建築など、eその他の5つとする。

a平屋

基本的に、町家の平屋と同じである(写真1-14)。

b低2階長屋

基本的に、町家の低町家と同じである。(写真1-15)ここでは、低2階長屋としているが、本文では以降、低長屋と呼ぶことにする。

c高2階長屋

町家の高町家と基本的に同じだが、隣と2軒にまたがって、入母屋破風がついている場合がある。(写真1-16)低2階長屋と同じく、以降、高長屋と呼ぶことにする。

d塀付き長屋

特に、足軽居住区で多く見つかった長屋に簡単な塀のついたものを塀付き長屋として分類する(写真1-17)。また、この類型の中には、入母屋破風のついたものもあった。

eその他の長屋

オーミケンシンを始めとする企業、または、一般の寮建築をその他とする(写真1-18)。

1-1-2-5 その他について

その他の分類としては、調査中に数軒見つかったa農家(琵琶湖の水運などの仕事に携わった水主衆の家)b漁家(どの分類にもあてはまらない分類不可能なもの)、cその他とする。

a農家

茅葺、平屋の農家建築。最近では茅ではなくトタン葺きの場合が多い(写真1-19)。

b漁家

切妻造り瓦葺妻入りの民家で、その向かい側に配置した米蔵と船小屋と対になっている。前面に下屋を設け外壁、壁面共に漆喰で塗り込めてあり、下屋の慰斗瓦の上部に明かりとりと煙出しをかねた小窓をあけている。(写真1-20)

cその他

今回の分類わけで、長屋で下見板のついた洋風建築など、どの項目にも当てはまらなかったものをその他とする。

1-1-3 台帳年代による分類

今回使用した台帳は、彦根市の所有する家屋台帳に記載されている建物のうち(明治元年〜昭和20年)以前の建物を抽出したものである。台帳には建築物の地番と、新築された年代が記録されている。今回の研究では、悉皆調査で調べた民家の現住所を、住所表示地番対照住宅地図と照らし合わせ、それぞれの民家の地積地番を割り出してから、家屋台帳で新築された年を調べている。そのため、現住所と対応する地番が住所表示地番対照住宅地番にない場合は、新築された年を判別することができない。このような民家が、調べた結果、約300軒(全体の約30%)にのぼった。また、民家の改造の際に台帳の年代が新しく書き直されなかった場合もあった。

次に、明治元年以前に建てられた民家について、家屋台帳では明治元年として記録されている。そのため、台帳年代が明治元年となっているものについては、江戸期に建てられたものとして考えている。以上をふまえて、年代の特定ができた民家については、以下のように分類を行うことにする。

明治元年については、江戸時代のものとして考えるので1年のみ、その後は元号の改元を考慮に入れ、おおよそ10年刻みで1]明治元年、2]明治2〜13年、3]明治14〜23年、4]明治24〜33年、5]明治34年〜43年、6]明治44から大正9年、7]大正10〜昭和5年、8]昭和6〜20年、と、区分することとする。

 

 

 

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