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(3) 鳴き砂を鳴きにくくする要因(仮説)

前述のように、姉子の浜の鳴き砂を取り巻いて、様々な事象が起こっていることが分かった。これらのことを整理し、実際に砂を鳴きにくくしている原因というのを仮説的にではあるが、以下にいくつかまとめてみる。

 

仮説1. 後背地における治山、河川改修との関係

二丈町内において、砂防ダムや治山堰堤が造られ出したのはそれほど昔のことではなく、昭和40年代以降のことである。(図2-9参照)この影響として考えられるのは、周辺河川や谷から供給されていた砂が、これらができたことによって、妨げられたり方向が変えられることによって、元々流れ出ていた砂浜などへの供給量が減少したことであると言える。

また自然の水系に沿っていた河川が、圃場整備や河川改修により流れが変えられたり水量が減少した結果、元々海に供給されていた砂の量が変化したと考えられる。これらのことが原因となって、砂浜の浸食作用が引き起こされたと考えられる。

仮説2. 周辺開発による影響

戦後以降、姉子の浜の周辺部では主にミカン畑の造成、ホテル建設、ゴルフ場建設、国道整備などの開発などが行われた。それらにともなう赤土を主とする土砂や、排水等の流出により海水汚染が引き起こされた。それが原因で、砂浜の石英粒の表面に泥やゴミなどの付着がおこり、汚れや不純物に敏感な鳴き砂が、少なからず影響をうけてたと考えられる。このことはゴルフ場の開発工事の時期とちょうど時を同じくして、近海での海産物の収穫量が劇的に減少したという事実からも、深い関連性があると考えられる。

またもう一つ、国道の舗装化、ゴルフ場建設やパーキング設置などによって、砂浜と後背地の山との関係性が断絶されることで、砂の供給量が減少しているということも考えられる。

仮説3. 近傍の集落・市街地からの影響

かつては二丈町内の砂浜は、そのほとんどが鳴き砂の浜であった。しかし現在では、姉子の浜ぐらいでしか砂が鳴かないというのが現状である。各浜の地理学的な位置関係を見てみると、明らかに姉子の浜と他の浜では違いがあることが分かる。それは、姉子の浜以外の砂浜はほとんど、集落や市街地などと隣接しており、人間の生活圏内に位置しているということである。すなわち様々なマイナスの影響も受けやすい環境にさらされていると言うことである。特にこの地域は下水設備をもたず、平成2年度から合併浄化槽の設置を始めたところであり、平成10年の段階でも普及率は38.8%である。このことから他の砂浜は、生活雑排水の影響を強く受けていることが分かる。他にも海水浴場としてなどレクリエーションの場として地元の受け入れ態勢ができていることから、都市民にも利用されることが多いということも挙げられる。

 

 

 

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