このことから、離れたところから海流を介して、姉子の浜へと砂が流れ込んできているわけではないことが分かる。このことからも、やはり姉子の浜の砂に関連性があるのは、後背地の山々であることが言える。
2. 地形的特徴
姉子の浜の海岸線長は1100mで、国内の鳴き砂の浜の統計で最も多い1000〜1500mの範囲内に属し、また海岸の形状は統計の平均値である形状係数0.20〜0.30と比べると少し係数は低い。(形状係数0.15)しかし現在、健全に砂が鳴いている地域だけを見ると、その弓なりの形状係数は約0.20で平均的であるとも言える。(図2-4)また海流の向きを考慮すれば、串崎が異質な砂などを流入させない位置に存在していることも重要なプラス要因であると言える。以上から姉子の浜は、鳴き砂の浜としての典型的な地形的特徴を持っていると言える。ただし現状の砂浜の幅は、他と比較してもそれほど広くはない。
また周辺の海域がかなりの遠浅であるにもかかわらず、姉子の浜近辺は適度に水深がある。このため、沖からの打ち上げ波が砂の洗浄のための十分なエネルギーを保持したまま、浜へと打ち寄せることが出来ると考えられる。また入り江の構造自体、海に向かって開いた状態になっている。沖には玄界灘が広がっており、特に冬場は北風と共に荒々しい波が浜に打ち寄せる。このことも砂の洗浄にはプラスの要因であると言える。
3. 位置関係
二丈町はいくつかの農村集落や漁村集落によって形成されているが、姉子の浜はどの集落からも離れたところに位置している。このことは、日常的な人の訪問や利用、また生活雑排水などの汚染被害からも比較的逃れられた要因であると考えられる。これは他の二丈町内の砂浜もかつてはほとんど鳴き砂であったのが、現在は失われている事実からも推測される。また広域的にみると、太平洋ベルトの最西端である福岡市よりさらに西側に位置している。このことは、砂浜を変貌させてしまう恐れのある、急激で高密度な開発から逃れることができた一つの要因としてあげられる。唐津湾内の海流(図2-6)を見てみると、唐津市付近から流入してくる生活雑排水や油膜などを含んだ海流は、一度鹿家集落の海岸にぶつかる。そしてそのまま北上して姉子の浜の沖まで流れていく。串崎があるおかげで、姉子の浜には直接入り込まないことから、海洋汚染による砂の汚染は比較的免れていると言える。