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1-2 姉子の浜の特性

 

(1) 鳴き砂の浜としての成立要因

北部九州の玄海国定公園内には、過去に鳴き砂の浜であったところが何力所か存在している。しかし現在鳴き砂の浜として知られている砂浜は、姉子の浜と恋の浦、奈多海岸ぐらいしかない。その他にも砂の鳴く浜というのは無いことはないのだが、それも極わずかである。

昔から二丈町内の砂浜は、どの浜も鳴き砂の浜として認識されていた。地元の住民の間では、「普通、海岸の砂というものは鳴くものである」といった一般的に考えると勘違いとなってしまうようなことが常識としてまかり通っていたほどである。しかし現在では、二丈町内の各海岸も姉子の浜を除いては、ほとんど鳴かなくなってしまった。それ以外では一カ所、集落から離れた、人はまったくと言っていいほど近づかない砂浜で、現在でも鳴く砂が残っているところもある。また、砂の洗浄や特別な器具を用いた場合にだけ鳴く浜もある。現状の二丈町の砂浜からは、こういったことから過去を伺い知ることができる程度である。

こういった現状の中、姉子の浜は依然と鳴き続けることができているわけである。なぜ姉子の浜の砂が、現在鳴いていることが可能であるのか。それを成立させている要因を、姉子の浜を取り巻く事象を元にして、ここで整理してみる。これは、姉子の浜の砂は一度鳴かなくなったことがあるのだが、その原因を探る鍵となりうると考えられる。また今後、姉子の浜を鳴き砂の浜として存続させていく方策を考察する上でも、大切になってくると考えられる。

1. 砂の供給源

姉子の浜の主要な砂の供給源は、背後に迫っている山々から直接流出してくるものと考えられる。姉子の浜周辺の地質を見てみると、白亜紀〜第三紀花崗岩が多く分布しているこが分かる。これは砂浜の主要な構成成分が、花崗岩に多く含まれる石英であることと関係していると考えられる。またこの姉子の浜の砂は粒が粗い。このことから姉子の浜の砂は、長い距離を河川などによって研磨されながら流れてきた砂ではなく、近辺から直接流入したものであると言える。

また唐津湾の砂の粒の中央粒径値の分布状況(図1-5)を見ると、姉子の浜周辺部の海底の砂は比較的粗い粒の砂であることが分かる。一方、唐津市の松浦川や加布里湾の泉川など長く大きな河川から流出してくる砂は細かく、それぞれの河口付近に堆積していることが分かる。

 

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串崎から姉子の浜と後背地を望む

 

 

 

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