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「TAP90'sからWAC21へ」

〜広域連携による観光振興を日指して〜

 

まもなく明ける新しい世紀は、観光が基幹産業として大きく飛躍する時代と期待されています。こうしたなか、昨年11月に東北6県で広域連携観光振興会議(通称:WAC21)が開かれ、新たな観光立県推進運動のスタートが切られました。

このWAC21は、90年代観光振興行動計画(TAP90's)に基づき、これまで約10年間にわたり行われてきた観光立県推進会議を受け継ぎ、その成果を踏まえつつ、21世紀に向けた観光の新しい課題に対応しようというものです。平成10年のTAP地方会議「全国大会」で、その新しい課題について、1]国際競争力のある観光地づくり、2]多様なニーズに応える新しい観光魅力の創出、3]大交流時代を迎え外客受入体制整備、4]「環境」、「バリアフリー」等の新しい課題への対応、5]「住んで良し、訪ねて良し」の観光地づくり、6]観光関連の情報提供システムの充実、7]観光客の円滑な移動手段確保のための広域的検討−の必要性が7項目取り上げられました。

同時に、これらの課題に的確に対応していくには、官民一体となり、新たな展開方針にもとづいた観光立県推進運動を展開していくべきとの提言もなされ、今後の重点項目として、1]観光事業の一層の連携強化と地域における観光振興のための人材育成、2]外国人観光客の受入体制の整備、3]新しい観光魅力の創出と多様なニーズヘの対応策の検討、4]環境問題、バリアフリー、旅行費用の低廉化、観光情報提供の充実等新しい課題への対応、5]広域高速交通ネットワーク整備のあり方−の5項目を決めました。

そして、開催するWAC21は、広域連携・地方主体型で、イベント連携・実体験重視型の開催方式とすることとなりました。これを受けて開かれた初の会議は、昨年11月に青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島の6県を対象に東北WAC21として開催され、最終日の全体会議では、6県知事による「東北六県観光立国宣言」が全国に向け発信されました。

こうして開催された東北WAC21が1年を経とうとしています。東北の観光振興は、今ゆっくりと着実に広域化が実現しつつあります。具体的な展開は、東北6県による全ブロック的な取り組み、あるいは北東北および南東北といった地域ブロックごとに進められています。まず、キャンペーンでは、大阪市での「東北六県観光展」開催や九州での「アジア・太平洋旅行博」への出展、首都圏での各種イベント開催への参加を通じ、全国規模でPRが行われています。

また、北東北二県(青森、岩手、秋田)の場合は、北東北三県観光推進協議会が母体となり、この10月1日から北東北観光キャンペーンが実施されました。キャンペーンは、「乗ってコ、飛んでコ、北東北」をキャッチフレーズに大手旅行会社とタイアップして行われる一方、観光ポスター・雑誌広告・車内広告等によるPRなど、旅行需要の喚起と誘客の拡大が図られています。旅行業の企画は、各社それぞれの工夫とオリジナル商品が売り出され、大手6社が共同送客しております。キャンペーンは今年10月から来年3月までを第1期、来年4月から6月までを第2期として展開される予定です。また、北東北三県が策定した、いわゆる外客誘致法に基づく外客来訪促進計画も今年2月に運輸大臣の同意を得て、「発見!もう一つの日本、北緯40度の道」をテーマにすでに動きだしております。

一方、南東北の取り組みもキャンペーンについては、東北6県として連動するほか、南東北グループとして北東北同様の展開をみせています。また、外国人観光客の誘客運動では、最近、宮城、山形、福島の3県に栃木も加わった形で具体化に踏み出しました。今年8月に運輸大臣の同意を得た外客来訪推進計画では「あずま・武家ロマン」を4県共同のテーマとして、観光ルートの紹介や台湾からマスコミ関係者の招聘、さらには英語、中国語などのパンフレットの作成など、アジアをターゲットにキャンペーンを展開しております。特に、福島空港が今年6月にソウル便、上海便を開設し、誘客活動にも一段と力が入っているようです。

さらに、平成10〜11年度の2カ年計画で、国土総合開発事業調整費による「東北地方における広域連携による交流拡大を通じた地域振興推進調査」を行っており、この中で東北地方の広域観光ルート形成促進の方策等、広域観光連携を図る方策が検討されております。

このように東北の広域観光は6県にとどまらず、栃木県、新潟県といった隣接地域を巻き込み、より大きな形で広がっています。

 

 

 

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