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*訪日旅行マーケットマーケティング・マニュアル1999/2000JNTO刊行物から抜粋

 

マーケティング戦略策定と実施の方法

 

現在、「ウェルカムプラン21」(訪日観光交流倍増計画)が推進されている中、日本各地で外国人旅行者の誘客活動が活発に行われています。また、地方公共団体を中心に誘客を促進するための戦略を策定する地方公共団体も増えています。

本書では、日本の地方公共団体や観光業関係者が外国人旅行者の誘客を効果的に行うための基本となるマーケット情報とノウハウを紹介しています。しかし、これらを利用しても誘客活動が計画的かつ専門的に行われなければ誘客に結びつけることは容易ではありません。外国人旅行者の誘客は、観光マーケティングという専門分野の業務であり、マーケティングを計画的に実施するためにはマーケティング戦略の策定が必要です。

マーケティング戦略とは、マーケット情報を基に作られた誘客人数、売上げ額、知名度の向上等地方公共団体や民間企業の設定した目標を達成するための方針を意味します。本項では、主に地方公共団体が主体となるデスティネーション・マーケティング(Destination Marketing)あるいは「地域マーケティング」(旅行目的地として観光魅力を売り誘客するためマーケティング)(注)に関する説明をしていますが、地方公共団体と民間企業の協力体制がますます重要性を高めている昨今、民間企業関係者に対しても充分ご参考になるものと考えます。

 

注:「デスティネーション」とは、旅行者にとっては旅行目的地、誘客当事者にとっては受入れ側の地域を意味し、観光業界で一般的に使用されている用語である。

 

1. 「マーケティング」とは?

 

欧米諸国や観光を基幹産業とする国々においては、「外国人旅行者誘客=観光マーケティング」という考え方が常識となっており、経営学部でマーケティングを修学した人が誘客事業に携わっています。

米国の著名なマーケティングの権威であるフィリップ・コトラーは、マーケティングについて、「組織の目標達成のために、競争相手よりも効果的かつ効率的にターゲット・マーケットのニーズと欲求を把握し、満足させることである」と説明しています。

これを外国人旅行者の誘客活動に置き換えれば、「組織」は地方公共団体や観光関係企業であり、マーケット(客)を満足させるための「商品」は地元の観光資源・施設やそれらを組み合わせたモデルツアールートや旅行商品で、「競争相手」は類似した売り物を持つ諸外国や日本国内の自治体、観光・宿泊施設ということになります。また、コンシューマー(消費者)のニーズを把握し、旅行者として来訪した時、このニーズを満足させるところまでフォローアップすることが必要不可欠です。

つまり、マーケティングでは、「宣伝する側」(日本)ではなく、「宣伝される側」であるマーケット(現地の旅行者及び送客を働きかける旅行業界・マスコミ)のニーズを優先する姿勢が基本とされています。

 

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観光マーケティングの専門書が数多く出版されている

 

 

 

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