日本財団 図書館


本研究では、デスティネーション・マーケティングとは、「旅行目的地を商品として、旅行客のニーズを満たし、かつ目的地となる地域の事業目標(旅行客数や経済効果の増大等)を達成するように旅行客を誘致するために行う誘客活動」と定義することとする。デスティネーション・マーケティングの主体となる観光組織は、国の場合は政府観光局(以後National Tourist Organizationの略称である「NTO」と称する)、都道府県・市町村では、観光所管部署である。

 

(3) 観光マーケティング戦略

1]デスティネーション・マーケティングにおける5つの要素

観光マーケティング戦略(以後「マーケティング戦略」と略す)とは、「観光組織のマーケティング目標を達成するように、経営資源を考慮しながら、不断に変化し高度の不確実性を有する観光市場環境、とくに競争状況へ有利に創造的に適応して、特定の観光市場を創造、維持または拡大するための観光マーケティング手段の統合方策である。これは、観光組織の大局的・長期的・競争的・能動的な見地から、一定期間にわたって活動の基本的な方向づけを提供する」ものである注4

日本国内の観光地が海外のデスティネーションと競合し、また、台湾のように海外のマーケットにおいては、世界各国のみならず日本の他地域とも熾烈な誘客競争を展開しているため、観光組織は、場当たり的にマーケティングを実施するだけでは、競争に伍することができなくなっている。デスティネーション・マーケティングを統合する戦略が必要となっているのである。

観光マーケティング戦略の策定には、1)ターゲット・マーケット(標的観光市場)の選定、及び2)観光マーケティング・ミックスの選定、の2つの要素があるとされている注5。しかし、デスティネーション・マーケティングの場合には、3)主要観光魅力(いわゆる観光目玉)の選定、4)デスティネーションのイメージ策定、5)マーケティング・パートナとなるデスティネーションの選定、が特に重要であるため、これらを加えた合計5つをデスティネーション・マーケティング戦略の要素とする注6

 

2]マーケティング・ミックス

マーケティング戦略におけるマーケティング・ミックスとは、マーケティングの効果を最大限に発揮するために用いる、統制可能な諸要因の組み合わせであり、E.J.McCarthyの表した4P(商品:product、価格:price、流通チャネル:place、プロモーション:promotion)が基本となっている注7。地域紛争、為替レートの変動、天変地異の発生による海外旅行自粛ムードの浸透等、政治・経済・社会現象は、観光組織自身によるコントロールが不可能であるが、マーケティング・ミックスは、観光組織が主体的に決定し統制できるものである。

デスティネーション・マーケティングでは、パッケジツアー、ホテルの部屋、交通機関の座席等ではなく、旅行目的地である地域全体を商品として捉えるため、具体的なミックスを認識しずらいので、デスティネーション・マーケティングにおけるミックスを「表3」のようにまとめた。

プロモーションとは「買手に情報を伝達して商品の存在とその効用性を認知させるたり、想起させることにより商品の需要を喚起・刺激し、市場の開拓の確保を図るためのマーケティング活動である」注8

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION