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ミチコ流 旅じたく、夢じたく

タレント 清水ミチコ

 

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しみず みちこ

Profile

岐阜県生まれ。1983年ラジオ番組の構成作家を経て、1988年フジテレビ系「笑っていいとも!」でテレビデビュー。現在は、雑誌・宝島「清水ミチコの顔マネ塾」への連載やCM出演、CD制作、ライブ活動など、マルチタレントとして活躍中。4月からNHK教育「天才てれびくん〜なりきりシンガーズ」の新レギュラーとしても活動している。

 

私は基本的にはインドアな人間で、好きな趣味のほとんど(ピアノ・ビデオ・読書など)は家の中でできてしまいます。ただし、旅行だけは大好きで、友達からのちょっとした誘いでも仕事でも、チャンスがあればほいほいと出かけられるタチなのです。ここだけは、アウトドア志向のようです。まずその準備作業(カバンに詰める事)がとても楽しみです。わくわくするんですよね。身体はちゃんと家にいるとわかってるのに、もう精神的にはどっかにでかけちゃってる。頭を冷静にして、きちんと荷物をコンパクトにまとめたいのに、このワクワク感が邪魔をするので、やたらハイテンションになっているのです。洋服から現金、おやすみセットまで、しっかり時間をかけてあれこれ考え、さあこれで、100%完壁と思える準備ができた、と思う。しかしそれでもなお、必ず寝る前になると「待てよ、、、レインコートはダサイんじゃないかしら。」とか、「やっぱ、もう少しおやつ入れとこう。けっこう甘いの食べたくなるもん。」なんて迷いが沸いて出ます。

この一人の会話がすでに楽しく、あんがい几帳面さん、と見直したり、いや、今回は、思い切って何も持たずの旅に出てみようか、と新たなる個性作りのスタートになったりするのです。早い話、旅行に100%完壁な準備の答えなど、ないものかもしれません。そして、「旅行」そのものにもまた、正解がないようです。よかったなと思える旅行ほど、ああすればもっとよかったとか、どうしてこんなにあそこが好きになったのかな、など、帰ってからもとりとめもなく思い出すのです。こないだ、私は家族で四国に旅行をしたのですが、夜中にそっと一人、窓から海をながめながら、旅の楽しみはもしかしたら、こうしてしみじみと孤独を感じられる幸せにあるのかなぁ、なんてふと思ってしまいました。孤独は、家の中で感じるととても不幸なものですが、旅先ではもっとストイックで、いずれはそれぞれどこかに終着する人生を、誰にもはばからずに堂々と見つめられる場所になりえます。そして、そんな気持ちに光がさすような明るさを感じられる不思議さもまた、旅が好きな理由かもしれません。もしかしたら、夫もそう感じていたのかも、と寝顔を見たら、いびきかいてました。

 

 

 

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