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●エッセイ

 

ESSAY

 

見つけた、出会った!わたしの日本と旅の夢

 

旅がとりもつ国際交流

淑徳大学教授・工学博士 北野大

 

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きたの まさる

Profile

1942年、東京都生まれ。東京都立大学大学院博士課程修了、専門は環境化学。現在は、淑徳大学国際コミュニケーション学部教授を務める。テレビ朝日系「やじうまワイド」などのテレビ出演をはじめ、ラジオ出演、執筆活動、講演など、多方面において活躍中。タレント・ビートたけし(映画監督・北野武)の実兄としても知られる。

 

旅の魅力はその非日常性にあります。日頃と異なる風景、言葉、食物など、それらに接することにより新たな発見、驚きがあります。

講演などで地方へお伺いする事が多い最近ですが、会場へは飛行機か新幹線、そして降りたらタクシーというケースがほとんどです。これは旅ではなく、単なる移動です。この移動をなんとか旅にすべく無理を言って、時折史跡めぐりなどをさせてもらう事にしています。本で読んだ知識、印象をその場所を訪ねることにより自分自身のものにしたい、こんな気持ちがあるからなのです。

ところで、旅先の町を最もよく理解する方法の一つは魚市場や野菜市場を訪ねることです。市場には生活者の実感があります。やはりその場の生活者との触れ合いが、旅の魅力をより増すものになると思います。

出来ることなら、各駅停車で、そして現地では乗合いバスで、そして食事も現地の方々がいく店でと、旅行者として単に上っぺらをかすめるのではなく、できるだけその生活空間の中に入ることが大切でしょう。

十年ほど前、英国のリバプールに出張で行きホテルに滞在したところ、現地の方からの一通のメッセージがテーブルの上に置いてありました。その内容は「もし一人で時間があるなら我が家に来ませんか。電話を頂ければ迎えに上がります。」でした。面識もない地元の英国人からの招待に好奇心旺盛な中年がすぐさま電話をかけ、その家庭を訪問したのは言うまでもありません。食物はクッキーと紅茶のみのシンプルなもてなしでしたが、家族が温かくもてなしてくれました。

見ず知らずの他人を、それも外国人を狭い"うさぎ小屋"に招くなど、日本人にはなかなか難しいことですが、家に招くことを最大の歓迎とする外国人の考え方からすれば、私は最大の歓迎を受けたのでした。

家が狭くとも、盛大な料理でおもてなしできなくとも外国人を自分の家で家族ぐるみ歓迎するこのようなことがお互いの理解につながり、世界の平和にもつながると信じています。

これまで我が家にお招きした外国人の方は全て私の知人でした。最近はこれに娘の外国人の友達も加わりにぎやかになりました。時の過ぎゆく早さを感じると共に娘の成長に喜ぶ今日です。

 

 

 

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