はじめに
ピースハウスホスピス教育研究所では、毎年1月に海外からホスピス緩和ケアの専門家を招聘し、ホスピス国際ワークショップを開催している。第7回目を迎えた今回は、世界で初めて「緩和ケア病棟:Palliative Care Unit(PCU)」という言葉を使って大学病院の中でケアを始めたカナダのマギル大学から講師をお招きした。緩和ケア部部長のタワーズ医師と心理の専門家としてケアに参与しているド・モンティニー先生、お二人の息のあったリードで、全国からお集まりいただいた参加者とともに、1月22日・23日の2日間、大変有意義な時間を持つことができた。なお、参加者は、医師、看護婦、薬剤師、ソーシャルワーカー、カウンセラー、宗教家、栄養士など、総勢90名であった。
全人的ケア
ワークショップは、今回の中心テーマである患者とその家族を全人的、包括的にケアをすることの必要性についての講義からスタートした。タワーズ医師は、まず、苦しみを体験するのはその人自身であり、病気の原因や苦しみを理解するためには、個人とは何かを知ることが重要であると強調された。ところで、人間性とは部分に分けることはできないが、まず分解してとらえ、再び統合したいと述べ、エリック・カーセルが示す13の人間性について紹介された。
それによると人間は、1]個性や性格、2]過去、3]家族、4]文化的背景、5]役割や関係、6]自分自身に対する意識、7]政治的存在、8]行動し創造する存在、9]日常の規則的な行動、10]肉体、11]秘密の生活、12]未来、13]霊的な側面、このように多面的な側面を持っており、その一つでも障害されれば苦しみとなる。人間がいかに傷ついたかは、ケアの提供者(ケアギバー)には見えない。その人に聴く必要があるが、人間がさまざまな側面を持っていることを知れば、緩和ケアがチームで行われることの重要性に気づく。終末期患者がやり残したことをやり遂げるためには、医療者以外の人のかかわりが必要であると述べられた。
講師のMrs. Montigny(左)とDr. Towers(右)