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コミュニケーションというのは話し言葉だけではない。非言語的なことが大変重要であると申しました。その非言語的なメッセージというのは、見ることによって得られるものが非常に多いのです。相手を知るための材料集めは、まず見ること、観察をすることによってなされるということを知っていて下さい。

 

見れども、見えず

 

もうひとつ、日本人のメンタリティーの中には、「見れども、見えず」とでもいうのでしょうか、障子とか襖でさえぎられていると、声は聞こえても、ただそれが閉められていると、聞こえないような感じになってしまうということがあります。プライバシーに当たる日本語がないというのも、プライバシーという感覚が日本人の中になかったというと言い方がちょっと正しくないかもしれませんが、聞いても聞かない、それから聞かないでいるとどこかへ行ってしまうというこころの働きがあったのではないか。たとえばエイズは大きな問題だといいながらも、日本の中でその対策が定着しない。これなどは見ないでいるうちにどこかへ行ってしまう。正式に向き合って取り上げると問題になるかもしれないから、何となく見ぬふりをしているうちにどこかへ行ってしまうのではないかというこころの働きがあるのではないでしょうか。日本の文化の中にも、歌舞伎の黒子というのがあります。あれは見ないという約束になっている。文楽もそうです。3人で人形を遣います。初めはそれが気になっていてもだんだんと気にならなくなって、人形の動きだけを見ている。日本人のメンタリティーの中に、そこにあるけれども見ないというのがあるのかもしれません。

 

 

 

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