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宮澤賢治の詩を想って

 

このような行為をしたことには、私にはひとつの思いがあったのです。真っ白な素晴らしい雪景色だったことが第一ですが、みなさんは宮澤賢治の『永訣の朝』という詩をご存じでしようか。最愛の妹が亡くなるとき、その日に降った最期の雨雪を取ってきて妹に上げ、「どうかこれが兜卒(とそつ)の天の食に変って」という詩文になった。これは最初、賢治は「天上のアイスクリームになって」と書いたのです。西洋では、「天国では天のアイスクリームが食べられる」という話があるので、そのような表現がなされていたようなのです。宮澤賢治は国際的といいましょうか、モダンな青年でしたからそういう知識もあったのでしょう。しかしそれを推敲して「兜卒の天の食に変って」(兜率天=未来仏の弥勒菩薩の住むところで、弥勒浄土といわれる)という仏教的な表現に変えてしまいます。そのほうがよいと私も感じますが、何はともあれ私は雪を見た途端に賢治のあの詩がサッと頭に浮かんだのです。以下にその詩の一部分を引用してみましょう。

「永訣の朝」

けふのうちに

とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ

みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ

(あめゆじゆとてちてけんじや)

うすあかくいつさう陰惨(いんさん)な雲から

 

 

 

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