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がんの治療においても抗がん剤で何とかなるということについては非常に熱心であり、あるいは手術ということについては非常に真剣で、そして看護婦さんも一生懸命にそれを手伝う。しかしがんの治癒率は、総合的にいえばよくて30%、多く見積もっても60%でしょう。がんの種類によっては手術後3年生存が10%以下というものもあります。そのような場合、あとの90%の方々は痛みや種々の症状を伴って3年以内に亡くなるわけです。種々の症状をとること、すなわち緩和することはしばしばできるでしょうが、現在でも苦痛な終末期を迎えている。その終末期にある患者さんに対して、いつでもできる慰めを、つい最近まで、医師も看護婦もおろそかにしてきたといってよいでしょう。症状を緩和するということについても最近まで努力が少なかったのです。痛みがあるのにモルヒネをなかなか使わず、せいぜい痛いときだけ使って、1日に2回以上使うと中毒になったり、悪い影響があって命を縮めますよというような言葉だけで対処していた。

 

シシリー・ソンダース先生の実践

 

このような欠点にいち早く気づいたのが、シシリー・ソンダース博士で、1967年にロンドンにセント・クリストファーズ・ホスピスを作りました。彼女はなぜそのようなことを思いついたかといいますと、ソンダースさんはもともとは看護婦になりたかったのですが、親の反対で看護婦になりはぐねて、オックスフォード大学に入って法律や経済などの勉強をした。そして第2次大戦の時に看護婦が少ないというので志願して臨時の看護婦養成所に入って看護婦の資格をとり、戦後も看護婦の仕事をやっていたのですが、脊椎の病気があって、どうも看護の仕事に耐えられないというのでソーシャルワーカーになった。

 

 

 

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