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3) 血液検査

 

(1) 小児の年齢による生理的末梢血液検査値の変動

 

小児期の血液検査値は年齢によって生理的に変動することが知られているので、今回の血液検査値の異常が病的なものか生理的変動によるものかを明らかにする必要がある。このために5歳から17歳と小児から成人へ移行する時期の末梢血の生理的変動を解析した。ヘモグロビン(Hb)値は男子では10歳を超えたころより13g/dl位から徐々に増加し17歳で15g/dlとなっている(図12)。

女子では、正常値の範囲内ではあるが14歳迄は若干増加し以後減少傾向にある。特に、14歳から男子に比しHbは明かに低下してくることが判明した。これらは内分泌環境の変化によると考えられ、男子においてはアンドロゲンが、女子においてはエストロゲン、プロゲステロンの作用の増大と関係している。また、女子におけるHbの減少傾向は月経開始による鉄欠乏状態によるもので、14歳台よりフェリチン値の低下例が女子に集中していることとと符合する(図13)。これに反し、平均赤血球容積(MCV)値が男子に比し女子で高い傾向があり、女子に鉄欠乏状態が多いこととは矛盾する結果となったが、この理由は定かでない(図14)。

白血球数の中央値は年齢によって大きな変動はないが、5、6歳で若干多く7歳位よりやや減少して一定となる(図15)。白血球分類は、5、6歳ではリンパ球が比較的多く、7歳より好中球が優位となることが判った。このリンパ球優位から好中球優位への移行は何によって調節されるのか、外的刺激による免疫機構の再編成を考える上で大切であろう。血小板数も年齢とともに減少する傾向にあり、この血小板数の推移は生理的に何によって調節されているのか、血小板産生の調節機構を考える上で興味ある点である(図16)。

トロンボポイエチンをはじめとする造血因子や各種サイトカイン、さらにはこれらを産生する肝、腎の発育に加えてマクロファージ、リンパ球系が生理的血小板数の変動にいかに関与しているか今後のテーマである。

いずれにしても、末梢血球数の年齢による生理的変動が5〜17歳の間で認められ、この間の小児の発育と密接に関係していることを確認した。

 

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図17 地区別にみた好酸球増多症の頻度。

(受診者数100人未満の地区は有所見率を示さず)

 

 

 

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