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検査方法:

1. 腹部超音波検査法

 

1] ポータブル型超音波診断装置 (フクダ電子 UF-4000)

2] プローブ (フクダ電子 FUT-C111A 3.5MHz 60R)

3] プリンター (Sony UP-890MD)

(いずれも獨協医大の医動物学教室所有) を用いて肝臓、門脈系、脾臓について観察した。肝臓と脾臓についてはその大きさを測定した。肝臓についてはプローブをほぼ胸骨中線において、肝左葉の断面よりその長径と短径を測定した。肝右葉については右鎖骨中線上と右前腋下線上にプローブをおいてその最大径を測定した。脾臓は背側左肋骨下縁での描出像によるその最大径を測定した。また、それぞれの描出像はモニターで画像を確認しながら平均5枚の画像を熱転写プリンターにより静止像としてプリントアウトした。また肝臓のメコン住血吸虫症による病変像の判定には大前(1992)*の診断基準に基づいた。

 

* Hiroshi Ohmae, Manami Tanaka, Masataka Hayashi, Yasushi Matsuzaki, Yoshihisa Kurosaki, Bayani L. Blas, Gerundio G. Portillo, Orlando S. Sy, Yuji Irie and Kazuo Yasuraoka (1992):

Ultrasonographic and serologic abnormalities in Schistosoma japonicum infection in Leyte, the Philippines, Am. J. Trop. Med. Hyg. 46: 89-98

 

2. メコン住血吸虫抗体検査

 

採血は検査目的と内容について十分な説明がなされた後、前腕上中皮静脈への静脈穿刺によりそれぞれの省の病院に所属する臨床検査技師によって実施された。およそ4ml を採血後直ちに遠心分離された血清に血清防腐剤としてアジ化ナトリウムを添加し、冷蔵保存した。これらの血清はできる限りの保冷状態で獨協医大の医動物学教室まで搬送され、後日、日本住血吸虫の虫卵抗原を用いて、IgG抗体のみについて酵素免疫吸着測定法 (ELISA法)により抗体価を測定した。このとき吸光光度計の吸光度(O.D.値)0.2以上を陽性と判定した。

 

調査結果:カンボジアの2省4地区において、総被験者数139名のうちメコン住血吸虫の慢性感染による明らかな肝繊維化像が観察されたのは26名であった。そして明らかではないが何らかの肝超音波像の異常が観察された被験者を含めると93名もの住民に何らかの肝病変のある可能性が推察される。しかし、腹部超音波像上の大前の診断基準による場合で病変像として最も重症化している結果としてのステージ3、つまりネットワーク・パターンを示す腹部超音波像は全く観察できなかった。マンソン住血吸虫症においては腹部超音波検査が数多く実施されたにもかかわらずその超音波像にはネットワーク・パターンが全く観察されていない事実から予想すれば、メコン住血吸虫症においてもネットワーク・パターンが現れない可能性も充分考えられるが、わずか百数十名の調査のみでこの結論を導き出す事は早計と言わざるを得ない。今後ともこの調査を引き続き実施し、考察を発展させたいと考えている。

 

 

 

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