世界の経済
1 GDPでみる経済の発展
図1
GDP<国内総生産>は、一国の中で一定期間(通常1年間)に生産された財・サービスの最終生産物(付加価値)の合計であり、それはその期間の国内で消費される最終生産物の合計と一致し、また、国内で生み出された所得に資本減耗と純間接税を加えた合計とも一致する。したがって、GDPの大きさは、その国の経済規模や市場の大きさを示す指標のひとつである。
GDPを人口で割った一人当たりGDPは、一人当たりの生み出す付加価値あるいは消費できる最終生産物であり、生産性や経済的豊かさを示す指標のひとつである。一人当たり国民所得(NI)(注)もよく利用される。
毎年のGDPが増加するのが経済成長で、年々物価変動があるのでこれを除いた(一定時点の物価で計った)実質GDPを前年と比べた比率が実質経済成長率である。経済成長は、技術の進歩により生産性が向上したり、より高い生産性の産業に生産がシフトして産業構造が高度化したりすることにより実現される。
2 地球規模での調和のとれた経済運営
第2次大戦後の世界経済の発展は、技術開発の進展とその伝播、関税引下げ・非関税障壁の撤廃・貿易の自由化・資本の自由化等による経済交流の進展、相対的に安価なエネルギーなどの資源の活用に支えられて実現してきた。しかし、1970年代の2度の石油危機を経て資源の有限性が意識され、また地球環境問題との調和の挑戦を受け、資源や環境と調和のとれた経済発展が課題となってきている。
また、80年以降、商品・サービス、資本、人的資源が国境を越えて一段と自由に移動するようになるとともに、経済の情報化が進み、経済活動のボーダレス化・グローバル化(4頁参照)が進み、経済の相互依存関係(5頁参照)が深まった。また、そのことが成長を支えた。このことは、各国が協力して調和のとれた経済運営や地球規模の問題の解決に当たらなければ、持続的かつ安定した成長ができないことを示している。
3 規模の大きい先進国経済
図1
世界全体として経済成長を遂げたなかで、国あるいは地域による成長のばらつきは大きい。アメリカは大戦後圧倒的な経済力を持っていたが、日本の驚異的な高度成長や、西ドイツ、イタリアの高い成長を中心にした欧州の経済の拡大、アジア諸国の発展もあり、アメリカは相対的には経済力を低下させた。とはいうもののアメリカGDPの世界GDP(ドル換算)に占める規模は97年26.6%と圧倒的に大きい。これに対し、日本は同年14.2%、経済統合を進めているEU(15か国)図1は27.4%を占めており、アメリカ、EU、日本の3国で、全体の68.2%を占める(日本は国別ではアメリカについで世界第2位)。
一方、日本を除くアジア23か国は10.8%、以下中南米32か国6.7%、中東21か国4.6%、CIS12か国1.9%(ロシアは1.5%)となっている。アジア諸国のなかでは、中国(香港を含む)3.7%、韓国1.5%等の規模が大きい。(以上経済企画庁まとめ)
上記統計と異なるが、IMF(国際通貨基金)統計(購買力平価*換算ドル表示)によれば、98年世界GDPに占める割合は、先進国55.4%、発展途上国39.8%、市場経済への移行国4.8%(ちなみに、日本7.4%、アメリカ20.8%、EU19.9%)である。
*購買力平価については、16-17頁参照
4 高い成長が続いたアジア諸国、しかしアジア経済危機も
図2(左)
IMF統計により、1981-90年と91-2000年の平均実質経済成長率(見通しを含む)をみると、世界計及び先進国は若干低下、発展途上国は、4.2%から5.5%へ上昇し、この20年ほど先進国より高い成長を遂げている。
先進国である韓国と台湾は相対的に高い成長を続けたが、同期間の比較においては、韓国は9.1%から5.4%へ、台湾は7.9%から6.1%へ成長が鈍化した。特に98年は、97年後半からのアジア経済危機の影響で韓国は5.8%のマイナス成長となった。台湾は鈍化したものの98年4.9%成長した。発展途上国の中国は、1992-95年には10%を越える成長であったが、経済調整によりその後鈍化し、98年は7.8%の成長となっている。