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3) 自然と暮らし

 

(1) 植物の利用

里山の暮らしでは、生産領域、衣食住、民俗行事、民間信仰、民間医療、娯楽等のさまざまな分野で自生あるいは栽培植物の利用が図られてきたことが知られている。とくに日常生活に欠かせない衣食住および生産領域での利用がさかんであった。ある地域で利用される植物がその土地の植生と密接な関係にあるのは当然のこととしても、人びとがどの植物をどのような目的で利用していたのかを理解することは、その土地の植生が潜在的に育んできた里山としての利用価値を判断するうえでたいへん重要な意味をもっているものと考えられる。

今回の調査では、表I-2-4に示すような植物77種ときのこ類2種の利用が確認された。こうした伝承は年を重ねるごとに失われていく傾向にあり、本来はより多くの植物が利用されていたものと推測されるが、今回の調査結果に限ってみれば図I-2-5に示すように生活の基本である衣食住(とくに食の部分)に関する項目と娯楽(子どもの遊び)、生産領域という分野に比較的多くの事例が集まっていることが分かる。これらのなかには、狭山丘陵とその周辺地域の植生や植物相の特色が反映されていると考えられる事例もみられ、たいへん興味深いものがある。ただし、衣に関する事例を一つも採集できなかったことは残念であり、時代とともに希薄化する民間伝承の性質をよく表しているものといえよう。

生産領域における植物の利用に関しては「自然と生業」の項目でふれたので、ここでは農具や食材、民俗行事、民間医療、娯楽等の側面からその特徴について考察する。

 

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図I-2-5 植物利用の内訳

 

 

 

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