b) 小ヶ谷戸
五反沢の東に位置し、丘陵の北側を北東方向に流下している。上流域から下流域まで樹林に覆われているため、とくにはっきりとした湿性草地はみられないが、谷底部には明瞭な水路が形成されている。
本谷から南に分岐する支流の谷戸で3本のベルト(K1区〜K3区)を設定して調査を実施した。
◇K1区(図I-1-7:植生断面図/表I-1-9:林床・湿地群落組成)
上流部の凹地に位置する。右岸は緩やかな勾配をもったコナラの疎林で、林床から低木層にかけてフジが優占する(SDR93.6)。これに続く谷底部はスギの植林であるが、湿潤な林床ではケチヂミザサとドクダミの出現が目立つ。さらに左岸の斜面はやや階層構造の発達したコナラ林となっている。
◇K2区(図I-1-8:植生断面図/表I-1-10:林床・湿地群落組成)
中流域の凹地状谷底部を中心とした調査区で、右岸は勾配の緩いコナラ林、反対に左岸は勾配のきついコナラ林となっている。林床群落の組成は右岸と谷底部では際立った優占種がみられず、多様度指数はともに0.84である。
また、左岸はマルバウツギが優占し、出現種数も少なく多様度指数は0.74とやや低い値を示している。
◇K3区(図I-1-9:植生断面図/表I-1-11:林床・湿地群落組成)
ベルト長が86mあり、小ヶ谷戸では最も長い調査区である。全体に広い凹地状をなす地形で、水路は谷底部の西端を流下している。コナラ林を主体とする森林で、谷底部ではやや疎林となり、階層構造の発達はよくない。やや明るい右岸では林床植生への出現種数が多く、多様度指数も0.85と高くなっている。谷底部ではアズマネザサがSDR81.4を示しているが、とくに際立った優占種はみられない。