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はじめに

 

狭山丘陵は、東京都と埼玉県との境にまたがって位置する丘陵である。古くから近隣の人びとをはじめとして多くの人びとに親しまれてきている。また、周辺地域はかっては農村地帯で丘陵に成立する雑木林の一部は農用林として利用されてきた。

しかし、首都東京から40km圏内という立地条件のために、開発の"波"に洗われることもしばしばであった。はじめての大規模開発は、多摩湖および狭山湖の築造であった。が、これら人造湖は、上水源確保が目的であったがためにその周辺が水源保安林として保護され、かえって丘陵保全の点では好ましい結果をもたらしたとさえ言える。この点で東京都の南を画する多摩丘陵と対照的である。とはいえ、狭山丘陵も都市化の波に抗しきれず、雑木林は時を追ってその面積を狭められつつある。

狭山丘陵の自然は、いわゆる原生的なそれではない。永い年月にわたって地域の人びととの交渉を続けてきたという意味において二次的な自然、もしくは半自然である。が、このことはいささかも丘陵の自然の価値を損なうものではない。地域の人びとの立場からすれば、むしろそれはより価値のあるものと言えよう。

この事業は、丘陵の自然あるいは半自然の価値を再発見、再評価し、積極的にこれを保全することを目的に進められたものである。ここで、保全とは単に丘陵の自然を現状のまま保守するということを意味するものではない。それは持続的な利用をも含意している。我々の企画は、ここをエコミュージアム、我々のいう雑木林博物館として活用し、地域活性化の拠点にすることにある。

 

 

 

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