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施設管理活動としては、地域の施設と環境の維持・管理、清掃・美化などがある。具体的には生活道路、公園、花壇、街路樹、地域集会所、老人憩いの家、児童館、体育館、グラウンドなどコミュニティ施設の維持・運営・管理の活動があるし、また野、山、川などの自然環境を維持管理する活動もある。こうした施設や自然環境を住民が自主的に維持管理することで、住みよい地域の保全がなされてきた。

ある市の例だが、街角の児童公園を行政が管理していたときは、いつもゴミだらけで利用する気がおこらなかった。清掃の担当者が掃除にきたときだけはきれいになるが、すぐまた汚れてしまった。地元の自主運営に切り替えたところ、自分たちの公園だということで気のついた人がゴミを拾ったり、落葉を掃いたり、花を植えたりしていつもきれいな状態に変わり、沢山の子どもたちの遊ぶ姿がみられるようになった。やがてこの地域では少子化がすすみ、公園を利用する子どもがいなくなるとともに、自主管理の労も大変だということで市に管理を返上したところ、たちまち草ぼうぼうの荒地になってしまった。都市の貴重な施設がこうして機能しなくなる例は、他の地域でもまた類似の施設でもおこっているのではないだろうか。

利用のなくなった児童公園は、改装して老人向けの公園に転換し地元の老人たちに管理してもらったらどうだろうか。

 

第四の自治活動

 

自治活動とは、以上の三種類の活動を自主的に実践するために必要な組織を整備したり維持する仕事である。役員を決めたり、事業計画を立案したり、会則を整備したり、資金を調達したり、会員の参加を促進したり、地域の総意をとりまとめたり、行政機関をはじめとする外部の団体と提携したりする活動である。さらにこうした自主活動の担い手にふさわしい住民を形成する、とくに自治主体にふさわしい市民意識の形成を行なう仕事がある。この市民意識の内容としては居住権意識・連帯意識・参加意識の三種類を指摘できるが、いずれも問題対処・親睦・施設管理・自治の諸活動を実践するなかで形成されるものである。

ただコミュニティづくりの三大活動は行政機関の仕事と重複する場合が多く、ともすれば行政の補完活動と混同されやすいことが問題である。今日では行政の業務の増加にともなって、その実施を住民に委嘱することがふえてきた。

防災、開発、福祉などの分野で新たに行政協力のための組織が結成されたり、各種の委員が委嘱されるようになり、こうした組織と委員の種類と数は膨大なものがある。住民の行政への依存がよく云々されるが、他方で行政の住民への依存が進んでいて、今後地方分権にともない基礎自治体の業務が増加すれば、こうした事態がさらに強化されそうである。

行政による住民への依存の受け皿となるのはふつう自治会・町内会やその連合体のようなコミュニティ組織であるが、依存がさらに進めば組織のリーダーたちから呆れられて見放されてしまうことがおこりうる。それ以上に問題なのは、こうした委嘱業務の増加が負担となって住民の自主的な活動を阻害し、コミュニティを押し潰す結果を招来しかねないことである。コミュニティ活動はあくまでも住民主体の活動であり、主役は住民であって行政は脇役として側面から専門的な支援を行うものだというコミュニティ行政の原点に立ちもどるべきであろう。そして力強いコミュニティが形成されて、地域の問題の多くが住民の自主活動によって解決され、行政協力のための委員や組織を不用にしてしまう時代がきてほしいものである。

 

より大きな活動に向かって

 

これまでコミュニティ活動の担い手としては、自治会・町内会のような小単位の住民組織が主役として活躍し成果をあげてきた。しかし今日ではこうした組織では対処しきれない地域の問題が登場し、そこにより大きいふところの深い組織が必要となってきた。すなわち学区を単位としたコミュニティ組織の結成であり、その背景にはいくつかの新しい事情がある。

ひとつは地域問題の広域化がある。震災時の火災に対処するためにはひとつの自治会だけが防火につとめても、周辺の人たちが火災を放置したまま避難してしまえば延焼をまぬがれない。いわば点としての防御は困難で、いくつもの自治会が協力して面として対処するためには、ふだんから協同態勢をつくっておかねばならない。

 

 

 

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