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(6) 少子・高齢化の進展と地方公共団体

少子・高齢化の進展は、地方公共団体にどのような影響を及ぼすかという点については、様々な要素があるため単純に割り切ることはできないが、大まかに言えば、以下の二つの側面があるといえる。

第1は、少子・高齢化に伴う財政需要はどの地方団体にもまんべんなく存在する。特に、高齢者の増加及び世帯内の無償のサービス提供の減少は、今後の少子・高齢化の進展に応じて地域福祉の担い手である地方団体におけるサービス提供の増加圧力となり、経常的に支出を要する財政需要が着実に伸びていくものと考えられることである。

第2は、少子・高齢化の進展により、15〜64歳台を中心に現行税制において直接的に租税を負担する者が減少することである。

 

1] 地方財政における社会福祉系統経費の増大

特に、老若男女、障害を持つ人も健常者も共に地域で通常の暮らしをする「ノーマリゼーション」を実現するためには福祉分野だけでなく都市計画や交通体系、住宅政策、生涯学習、職場など多くの分野が協力しなければならないが、核となるのは地域福祉であり、地域福祉は先進諸国においてはほとんどの国で基礎的自治体の仕事であり、わが国でも社会福祉を中心とする行政の中で、極めて地方公共団体が果たす役割は大きいものがある。地方公共団体が果たす役割は、児童福祉や障害者福祉、高齢者福祉等の社会福祉の推進、生活保護の実施、健康づくり等の公衆衛生やし尿・ごみ等の廃棄物処理、国民健康保険事業や老人保健医療の実施等多岐にわたる。

これらの財源は、国の社会保障関係費の中から国庫補助金や国庫負担金として地方公共団体に交付される財源と地方公共団体自らの財源及び利用者の負担金等でまかなわれているが、特に、前述のように福祉行政の展開の中心的役割を市町村が果たすこととなったことから、その地方負担の増加は国庫支出金の増加よりも著しくなっている。

地方公共団体における民生費の目的別歳出の推移を見ると、1985(昭和60)年度における老人福祉費が約1兆3千億円で民生費に占める割合が20.7%であったものが、1997(平成9)年度には約3兆9千億円で30.4%と著しく増加している。

 

 

 

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