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1 はじめに

 

長引く景気低迷の影響等により、地方自治体の財政状況は、押しなべて非常に厳しい局面を迎えており、迅速かつ着実に行財政改革を推進していく必要がある一方で、少子・高齢化や高度情報化、さらには産業・経済をはじめ様々な分野におけるグローバル化の進展など社会経済環境の大きな変化に伴い、地方自治体に求められる行政ニーズも複雑多様化し、幅広い分野にわたって質の高い行政サービスの提供が求められている。

こうした中で、市民が安全・快適で豊かな生活を享受するための魅力的な社会資本の整備を進めていくためには、「最小の経費で最大の効果を挙げる」という地方自治の原点に立ちかえって、厳しくその実施手法等を検証していかなければならない。

このような状況において、民間企業等の豊富な資金力・経営能力や高い技術力を活用して公共施設の整備・管理運営を行っていくPFIの導入を検討することは、効率的な財政運営を進めていくうえで重要である。

本稿では、これまでに本市が公共施設の整備にあたり民間活力を活用した事例のうち、PFIの手法に最も近いと思われる特殊街路「新井口駅前線」(歩行者専用道路)整備事業を紹介するとともに、PFIを導入するにあたっての課題等を整理する。

 

2 特殊街路「新井口駅前線」(歩行者専用道路)整備事業

 

(1) 西部開発事業

1]社会的背景と目的

本市では、昭和30年代の経済の高度成長や急激な都市化に伴う人口や産業の集中により、市街地の外延的な拡大とともに都心部に諸機能が過度に集中し、住宅不足や無秩序な土地利用、自動車交通の渋滞、騒音・排気ガス公害の発生など、過密による弊害が顕著となり、早急に都市機能の回復を図るため、必ずしも都心部に立地を要しない施設を再配置する新市街地の開発が必要となっていた。

加えて、産業構造の高度化や消費生活水準の向上、交通通信網の整備による都市圏の拡大等によって、工業・商業・住宅等の土地需要が増大してきたため、土地の価格が高騰し、また土地そのものの不足により深刻な土地取得難を引き起こしていた。

 

 

 

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