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キ. その他、スタジアムはJリーグ対応で球技の開催は年間60日、80試合程度(市が保証するものではない)、賑わい施設は「応募者自らが独創的な提案を行う」としつつも「日常から市民が利用できる施設」「競技運営と完全に分離するものではなく、競技開催時、非競技開催時を通じた複合的な利用を検討する」ことを条件とした。

 

ク. 経営条件については、「スタジアム使用料などは条例で定める他の施設に準拠するなど公共性の担保に配慮しながら、適正な価格を事業運営会社が決定し、市の承認を得る」ことを義務づけたほか、毎年市の請求に基づき、事業運営会社の経営収支状況の報告を義務付けた。

 

以上が、募集要項作成にあたり、特に留意した主な点であるが、第1章の3-(4)でも述べられているように、こうした事業コンペにあたっては、一方で民間事業者の創意工夫を活かすために柔軟な仕様とする必要があるものの、他方で柔軟性を拡大すればそれだけ客観評価が困難になるという二律背反の問題が常につきまとう。

今後は、さらに透明かつ公正な事前の評価基準の設定とその公開がますます強く求められてくるものと思われ、そういった意味でも地方自治法施行令改正によって導入された「総合評価方式」の活用を含め、客観的な評価基準を早期に確立することが必要不可欠である。

 

また、昨今の厳しい経済情勢の下で、一般的には営利事業として成り立ちにくい事業を盛り込んだ今回の事業コンペであったが、結果的に2グループからの意欲ある提案が得られ、選考の結果、前述のような民間活力をうまく取り入れた事業計画をつくることができた。

しかし、募集時の企業の反応は、やはりスタジアム完成後の事業運営が大きな課題となったようであり、事業の採算性や官民のリスク分担については、今後PFIへの取り組みが全国的に進められていく中で、これまで以上に民間側からシビアな条件設定が求められると予測される。

いずれPFI市場が形成されれば、こうした分野ごとのリスク分担や委託費用の相場等も形成されてくるのだろうが、当面は、事業運営にあたっての合理的採算性等を官民相互に模索しながら取り組んでいかざるを得ない。

 

 

 

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