1 はじめに
近年、欧米の諸国においては、さまざまな行財政改革が試みられている。特にイギリスでは、これまでの行政と民間の役割分担を見直し、「民間で可能な業務について、廃止できないか、民営化できないか、外部委託できないか」という基本的な原則のもとで、エージェンシー制度や公的資本の民間所有(PFI)の導入など、より柔軟な手法によるサービス提供や社会資本整備が行われてきている。
わが国の政府・地方公共団体においても、国と地方の長期債務残高が、平成12年度末にはあわせて600兆円を超えるという厳しい財政事情のもとで、一層効率的な公共事業の推進が求められており、財政再建のための公共支出削減と社会資本整備の両立には民間の技術・資金の導入が不可欠となっている。
札幌市でも、平成10〜14年度を計画期間とする行財政改革推進計画において、市債発行額の削減目標を立てて、健全な財政運営を進めることとしており、また、平成12年度からスタートする新しい長期総合計画においても、都市経営基盤の確立と自律性のある行財政運営の推進に努めることとしている。
さて、平成11年度の大都市問題調査研究委員会では、前年度に引き続き公共投資のあり方、とりわけPFIについて研究を行い、千葉市、北九州市、福岡市の事例研究を行ったところである。
この現地調査の中で、それぞれの都市には固有の歴史や特性があり、行政と民間の役割分担の見直しといっても、同じレベルでは論じられないことが明らかとなった。
例えば、千葉市のPFI導入検討事例(消費生活センター・計量検査所複合施設整備事業)では、消費生活センターを直営で、計量検査所を委託で運営したいというものであったが、現在の札幌市における両者の形態は、消費者センター業務のほとんどを委託で、計量検査所を直営で行っている。
札幌市の消費者センターについては、昭和43年に消費者保護基本法が制定され、続いて翌44年に地方公共団体の固有事務として消費者行政が位置づけられたことから、45年には消費生活相談業務を札幌消費者協会(44年発足)に委託しており、以後、その範囲を拡大し、現在、ほとんどの業務を委託している。