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第1章 PFI適用事業の絞り込みに向けた取り組み

 

1. 新事業手法の展開(『川崎版PFI基本方針の策定』)に向けて

川崎市総合企画局都市政策部 主幹 大矢野修

 

はじめに

 

日本版PFI(Private Finance Initiative)と呼ばれる『民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律』が昨年の7月に成立した。PFIは、英国で誕生したものであり、従来公共部門が担ってきた社会資本整備や公共サービスを民間の資金と能力を活用して行う制度である。わが国において、PFIが注目されたのは、英国と同じく厳しい財政状況のもと、多様で広範な市民ニーズの高まりに対応し、いかに社会資本整備を進めるかという大きな課題に直面したからである。低成長下の財政環境にあって、多様化・高度化する市民ニーズに的確に対応していくことは自治体行政の責任であり、時代状況にあった財政フレームの再構築と効率的な行財政運営ならびに事業方針の確立は急務であり、PFIによる事業展開は大きな意味を有している。

だが、PFIと同じように、かつて民間の活力導入という大きな期待を持って登場した『第三セクター』が深刻な経済状況の中で経営難に直面している現況を見ると、PFIの検討を始める前に、『第三セクター』がなぜ経営難に陥ったか、また、設立にかかわった多くの先駆者の思いや一個の独立した生命(法人)を誕生させた責任も含め、これらの冷徹な分析も必要である。しかも、英国での事例にもあるとおり、PFIは財政再建策の一環であり、明確な財政改革目標と財務戦略をもってはじめてそれは確かなものとなる。

ここでは、『第三セクター』や財政改革に関する詳細な議論を展開する余裕はないが、『第三セクター』等に関するフィーズビリスタディーと同じく、PFI事業を展開する前にきちんとした議論を行う必要はあると考える。

この小論では、川崎市が行っている『新事業手法導入(川崎版PFI基本方針の策定)』についての検討内容の概要説明を行い、総合的評価システムの一つとして、PFIなどの新事業手法を位置づけることの意義を述べていくこととする。

なお、本論作成にあたっては、『川崎方式<総合政策評価システム>の考え方(平成11年度)』及び『新事業手法検討調査報告書中間報告〜川崎版PFI基本方針の策定に向けて(平成11年度)』を参照し、適宜引用を行った。

 

 

 

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