分権の「分」という字の字解きをするわけではありませんが、「分配の分」というふうにどうも一般的に考えられがちです。しかし、それではどうも私は道を誤るのではないかということを、冒頭に確認しておきたいと思います。地方主権と言ったらこれはその通りかもしれませんが、それではいかにも中央と対立的になりまして、対等・協力の精神に反してしまいます。地方主権とまでは私は申しませんが、どうも地方に権利を「分配」するという考え方よりは、この「分」は先程の映像でも少し出ておりましたが、「分担の分」だったり「分割の分」と考えた方がどうやら正解ではないか。機関委任事務の廃止というのは、まさにこれであることの証明になっているわけです。そうした言葉、字解きは別にしましても、制度的な仕組み、そして直面する課題、将来に抱える問題点、今日は6人の皆さんから幅広い議論をお願いしたいと思っております。
議論の展開の流れとして、三つのステージに分けたいと思います。第一のステージでは、この新しい制度改革の意義づけをなるべく前向きな視点から捉えていただいて、それぞれの立場での捉え方を具体的に提示していただき、問題点も指摘していただきたいということです。
そして、それを受けて第二のステージでは、この中で私はもっとも大きな流れ、変更であると思いますが、住民、自治体を含めた自己決定、自己責任というものの具体的な行政の進め方をそれぞれのお立場から議論を詰めていただこうと思います。
そして三番目のステージでは、特にこの問題の将来への課題といたしまして、財源問題と地方自治体の合併問題が、皆さんの頭の中で相当大きな領域を占めているのではないかと思います。最後のステージでは、この二点を時間の許す限り議論を深めてお話をしていこうと思っております。
それでは早速ですが、諸井委員長から基本的なご見解をお願いいたします。
【諸井】地方分権推進委員会委員長の諸井でございます。皆様の本当に絶大なご支持のお陰で、昨年7月に475本の法律を一括して改正をする「地方分権一括法」が国会を通りました。この4月1日からいよいよ実施に移されることになったわけです。いわばずっと中央集権で来ました日本の地方分権のスタート、出発点ということではないかと思っております。
なぜ今、地方分権なのか。今まで日本は中央集権でかなりうまくやってきたと思います。特に1980年代ぐらいまでは、この中央集権がかなり効率的に運営されてきたのではないかと思います。その過程で、たとえば警察とか消防とかいうようなものも各地域にずっと整備されてきましたし、学校とか、あるいは病院のようなものも整備されてきました。あるいは鉄道、港湾、空港、道路、そういうものもずっと整備されてきました。