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僕はそこで行を始めて6年目になります。1,233回のうちの6回を僕がやっているんですけど、(混じってやってるんですけど。)そこで祈る内容は、地味増長−土地に力をください−っていうことを祈っているわけです。地味増長で、その次に、五穀成就−穀物をたくさん実らせてください−そのあと、万民豊楽−人々が幸せになりますように−という祈りなんです。そして奈良仏教ですから、そのあと、鎮護国家−国が安泰でありますように、という祈るようになっているんです。国といっても、今の近代国家の概念とはちょっと違って、聖徳太子の頃ですから、まあ、村を少し大きくしたような、そんな感じだったと思うんですね。そういうのを、僕は、一年間の年の始めにやります。

行くと、お坊さんが坊主頭にしようと思って電気バリカンを持ってきて待っているんです。僕が行くとビーンとスイッチを入れて待っているんです。で、今年は剃りますかって言われたんですが、剃るとまた生えてこないような危険性を感じるんで、電気バリカンで刈ってもらいまして。まあ、多少時間が経ちまして伸びましたけどね。そして、一年間の始めはそういうことをやって、自分の普段の時間の流れとちょっと違う、自分だけの静かな時間をおくっているんですね。

 

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毎年の行は、

僕にとって「自然を守ろう」という

祈りのかたちなんです。

 

それで、もともとの祈りの行の内容は、"吉祥悔過"といって、難しい話はしませんけれども、"吉祥天"に懺悔をするという行なんですよ。で、吉祥天になんで懺悔をするか、「私は何にも悪いことはしていません、もう天地神明にかけて何にも悪いことはしていません」というふうに、言った人は、嘘つきになります。なぜならばね、僕らが歩いていても、道を歩いていても、野原を歩いていても、アリを踏みつぶすでしょ。知らないうちに殺生してるわけです。さっき僕は、県庁のお弁当をいただきました。とってもおいしい、立派なお弁当をいただきました。刺身がありまして、まあ、ハマチの刺身だったらね、ハマチを殺して、殺生して食べてるわけですよ。鰺フライを食べたら、鰺を殺生して殺して食べてるわけですよ。自分が殺していなくても、自分が食べるために殺しているということになっていて、結局ですね、何にも悪いことをしないで生きているということは、不可能であります。

そういう認識がありますんで、そういう知らず知らずのうちに犯してしまった、重ねてしまった罪を吉祥天に年の始めに祈って、「ごめんなさい」(お経でマニュアルになってるんですが)そして、許してもらうというか、きれいにお祓いして祈ることはさっき言いましたように−土地に力をください−地味増長、五穀成就−田んぼのお米や麦を実のらせてください−そして、−人々が幸せになりますように−という祈りをしているわけですね。地味増長、五穀成就なんてのは僕は普段、農業を守ろうとか、そういうことと非常に繋がりますんでね、僕は自然な気持ちで、この行に参加している次第であります。

 

 

 

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