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よもや、きょうは県の主催で申しわけないですが、県とか市町村が公害反対なんていうと、最初は非常に渋い顔をしていたものでした。世が移れば変わるもんで、これだけ皆さん日本全体が環境問題だということになったわけでありますが、よくよく考えてみますと、これだけ騒いでいるのにかかわらず、環境の方は急激に悪化をしております。

これ後で皆様にスライドをお見せしますが、それは使用前、使用後のスライドを後でゆっくり見ていただきますが、例えば皆さんの母乳の中のダイオキシンをはじめとする化学物質、よもや人間の母乳が安全基準を超えるほどの汚染物質に汚染されているということを皆さんは考えたことおありになるでしょうか。私たちが生まれて最初に接するこれは食べ物であります。それが実はある場合には危険な水準に達していて、どうか安心して飲ませてくださいとは自信を持って言えない状況であります。もちろんそれやめろということも言えない今大変難しい状況でもあります。あるいは30年前、東京や日本の大都市の水道水は世界で最もおいしいと言われたものです。日本に入港した船が、持っていた水を捨てて東京の水道水や神戸の水道水に入れかえていた。これは世界的によく知られた話でありますが、残念ながら今や皆さんミネラルウオーターを離さなくなりました。あれは各家庭で恐らく台所に水の浄水器をつけられた家庭が多いと思います。わずか30年で、あれだけおいしかった水が、今やそのままとても飲めた代物ではなくなってきたわけであります。これはやっぱり水の汚染がそれだけ進んで、それだけさまざまな浄化のために薬剤を投入しなくちゃならないということが大きな原因であります。特に若い諸君はミネラルウオーターを離しませんが、値段を考えたことありますか。1リットルのミネラルウオーターが100円以上します。ガソリン幾らしますか。今八十数円でしょう。わざわざ地球の裏側から運んできて、コストをかけてつくり上げたガソリンよりも我々は高い水を平気で飲む。そんな時代になってしまったわけであります。

あるいは、最近新聞でもちらほら出てきました。きょうの屋外での安全時間、きょうは日がこれだけ照りますから、屋外の活動は3時間以内にとめた方が無難です、これはもうオーストラリア行っても、ニュージーランド行っても、世界じゅうで始めておりますが、私たちは太陽というのは恐らくいかなる文明、いかなる歴史においても、人間にとって恵みの存在だったと思います。太陽がなければもちろん人間の生活が成り立たないわけでありますが、ところが今や太陽に当たっちゃいけないと、太陽は危険な存在ですよということを世界じゅうでキャンペーンをしています。オーストラリアなんか行きますと、子供たちが外へ遊びに行くときに、お母さんは飛び出して子供をふんずとつかまえて、顔じゅうべたべた日焼けどめを塗って、大きな帽子をかぶせて、長そで着せて、サングラスかけさせて、そして「日に当たっちゃだめよ」と言って子供を外に送り出すんです。これはごく普通の光景であります。これも皆さんご承知のとおり、オゾン層の破壊によって実は地上に届く有毒な紫外線の量がふえてきて、癌がふえるとか、白内障がふえるとかいった問題が深刻になってきたせいであります。よくよく身近に考えたって、例えばかまどの煙、つまり煙というのは、ほとんど人類の歴史においては好ましい存在だったわけです。そこに民の生活があり、産業があった。それが煙となってあらわれたわけでありますが、今煙なんて言おうもんならたちまち、これは公害じゃないか、大気汚染じゃないかということになりまして、煙なんて言葉もすっかり変わってしまいましたです。

私たちは、知らない間に少しずつ悪化していく環境には気がつかないんです。よくゆでガエルという余り上品じゃない表現がありますが、冷たい水にカエルをほうり込んでそのまま火にかけると、どんどん少しずつ温度が上がってぐつぐつ煮えていきます。

 

 

 

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