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おわりに

本調査研究は、中球磨5か町村を調査対象地域として、この5か町村が合併した場合の地域づくりに資する参考資料とすることを目指して実施されたものである。その具体的な手法としては、先ず、地域を取り巻いている時代状況を概観し、この地域の望んでいる将来像を踏まえた上で、地域の現況に鑑みて課題を整理し、中球磨5か町村が一つの新町として地域づくりに取り組むに際して、地域の現有資源を踏まえて、参考となりうる他団体の事例とその活用視点の提示を行った。

しかし、ここに提示した多様な事例による取り組みの選択肢は、単にそのまま中球磨地域でも導入すれば、自動的に地域の課題が解決され、地域づくりがうまくいくというわけではない。地域づくりへの取り組みが成功するには、その地域に住んでいる住民がその地域の資源を活用し、自ら考え行動することが求められる。

その考え方としては、たとえば、宮城県津山町の事例が参考になろう。同町では、地域おこしの核になる地域資源の特定に際し、当時の町長が、必要な条件として9つの条件を挙げた。その条件とは、1]町の中にあるもので開発可能なもの、2]住民に親しまれるもの、3]公害や健康障害を及ぼさないもの、4]気象・季節に関係なく通年経済活動が出来るもの、5]資源は無限大にして自給可能なもの、6]市場開拓が容易で価格変動が少ないもの、7]素材は無駄なくすべて使えるもの、8]後継者の育成が容易なもの、9]ほかにはない本町独自のもの、以上の9つである。これを全てクリアできた資源「杉」の活用ということで、同町は、木工芸品による地域おこしに辿り着き、地域の活性化が図られたのである。

本調査研究の中で提示した事例は、いずれも中球磨地域に現に存する資源と他地域の共通した成功要因に鑑みて、大いに参考にしうると考えられるが、しかしながら、地域づくりの成否は、あくまでも、その主体である地域住民とその有力な支援者である行政とのパートナーシップを前提として、両者の連携・協働関係の中から新たな地域づくりの核となるものが中球磨においては何であるかを、今後の検討の中から検証し創造していくことが、何よりも重要である。

地域づくりも企業の経営も市町村の行政運営も全て「人」にかかっている。中球磨地域の振興のために誰よりも想像力に溢れ、活力に溢れ、そして情熱に溢れた人々は中球磨地域の「住民自身」である。中球磨地域の行政と住民により、この調査研究報告書に挙げられた事例の裏側に内在された成功の要因も含めて、改めて合併を契機として、どのような地域づくりが可能なのか、どのような地域づくりを進めていくべきなのか、といった議論が今後、真摯に行われ、その結果、すばらしい中球磨地域の振興が図られることを期待したい。

 

 

 

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