(2) 安定した雇用創出
中球磨の目指す「豊かなまち」とは、金銭には換算できない心の豊かさをも含むものだとは言いつつも、収入や所得の安定が図られなければ、住む人々の自立した生活は成り立たず、住む人々の心の「豊かなまち」も、絵に描いた餅になってしまう。そこで、まずは収入や所得の安定をもたらす「安定した雇用創出」が、目標に至る第2の柱となる。
現実の地域づくりにおいても、この10年間で全国的に地域の活性化に成功した市町村に共通する要素は若年人口の定着、そしてその背景は魅力ある就業の場の確保、魅力ある住まいの確保である。
「安定した雇用創出」のためには、安定した雇用の場の確保が必要となる。だが、現下の経済のグローバル化による国際分業化、国際競争化の経済事情と中球磨の置かれた地理的な条件などを踏まえると、従来型の企業誘致は容易ではない。しかしながら、近年、都市住民の意識や就業形態は急速に変化してきており、高度情報化の恩恵を受け得る職種などにおいては、都市を離れ、豊かな自然環境の下で、人間らしい生活をしながら働けるような場を求めるという傾向も見られる。すばらしい自然環境を持っているがゆえに、今後は、中球磨においても新規産業の創出や起業や誘致によって、安定した雇用の場を確保しうるのである。
さらに、中球磨の主要産業である農林業を活用し、農業と製造業が連携した付加価値を高める地域産業を創出したり、球磨焼酎製造において連綿と培ってきたバイオ技術などを背景に新たなバイオ関連分野の産業などの自然環境型企業を誘致したり、起業化したりすることにより、若者が定着できるような魅力的な雇用の場を創り出す方策を検討することが必要である。
(3) 高度な健康福祉社会
健康は住民すべての願いであり、地域発展の基盤、そして人々の活力の源泉である。中球磨の人々が生き甲斐を通じて健康的に生活し、老いてもなお健やかに暮らせる地域づくり、それが、目標に至る第3の柱である「高度な健康福祉社会」である。
健康を維持・向上させるためには、一人一人が自分の健康は自分で創り守るという意識を基本に、運動や食生活などを自己管理できる社会であることが必要である。そのためには、医師や保健婦・ヘルパーなどのマンパワー及び保健・福祉関係の施設、そして行政関係機関などと連携した高度な健康福祉社会をつくることが必要である。
さらに、ノーマライゼーションの理念のもと、高齢者や障害者が自由に社会参加ができる地域社会の実現(やさしいまちづくり)をソフト、ハードの両面から目指していくべきである。
また、少子化が進む中、21世紀を担う子供たちが生まれて良かったと思えるような、豊かな心を持つ子供を産み育てられるような地域社会づくりも必要である。
中球磨地域は、施設や人材など、保健福祉に関する地域資源に恵まれた地域である。また、最近の健康志向の強まりの中で、上述の豊富な地域資源を活かし、「地域の健康、福祉」などをキーワードに、表題のとおり高度で先進的な健康福祉社会を目指すことが重要であり、健康福祉の分野も農林業と同様、中球磨地域の人々の将来を考える上で、重要な柱に位置づけられよう。