4 類似観光地における観光振興への取組
白浜町と類似の性格を有する大都市圏外縁部の大規模温泉地は、前でみたとおり市場環境上厳しい状況にある。そこでこれらの観光地が観光振興に向けてどのような取組を行っているかについて把握した。
(1) 大規模温泉地の宿泊動向
大規模温泉観光地への宿泊者数の推移は下記のとおりとなっている
○ 熱海.........ピーク時(昭和44年)531万人、直近時358万人で対ピーク時比67.4%
○ 加賀片山津温泉...昭和63年119万人、平成9年度76万人で63.6%に減少
○ 加賀山代温泉....同180万人、133万人で73.8%に減少
このように宿泊数はピーク時と比較し大きく減少しており、厳しい環境のもとにある。こうした背景として、平成不況による観光需要の低下、国民の観光形態、志向の変化等があげられる。このため、これまで団体客の受入地として機能してきた大規模温泉観光地は、いずれの地域においても、観光ニーズに対応した新たな観光産業の活性化が重要な課題となっている。
(2) 大規模温泉観光地での活性化の取組
ア 熱海温泉
○新たな観光需要の創出
首都圏内の学校や会社などの団体客が減少しており、小グループ化する観光客層に対応するため、これまで、休憩と食事をパックとした滞在商品に取り組むなど「日帰り客」対策を展開した。しかし、人件費や従業員の負担が大きいなどの理由から現在はサービスを中止している。
○新たな観光資源の創出
熱海港周辺部が地中海の水際線に似ていることから、熱海サン・ビーチ(人工海浜)や、ボードウォークやヨット・ハーバーなどからなる渚親水公園を整備し、観光客や市民のための親水空間の創出に努めている。渚地区(渚親水公園の背後地)では、地元関係者による「渚地区のまちなみを考える会」を設立し、当地区再開発事業に関するヒアリングや勉強会などを実施しながら、新たな観光資源の活用に向けた活性策の検討を行っている。
いくつかの宿泊施設では、女性客の確保を目指して、施設内にエステティックサロンを開設し、宿泊客にはエステティック料の割引サービスを行うなど、観光客に「癒し」を感じてもらうようなサービスも提供している。
○新たな地域イメージの創出
平成10年度から、「熱海ロマンキャンペーン」を展開している。これは市と観光協会と共同で、JR東日本や旅行代理店に対してキャンペーン活動を行っているものである。数多くの体験型のメニューを用意し、リピーター客の増大を目指している。
レトロ調ボンネット・バス「湯〜遊〜バス」が、尾崎紅葉の「金色夜叉」で有名な「貫一お宮の像」や「MOA美術館」などの市内観光地を周遊させ、観光客のルート観光を支援している。