序 調査研究の主旨・目的など
―中部圏における人材の育成・確保をめぐるキーワード―
1 本調査研究の主旨・目的
本調査研究の基本テーマは、「地域活性化と高等教育」という点に集約される。すなわち、福祉・保健、教育・文化、産業経済その他、さまざまな分野の活性化を推進するにあたり、既存の、また、将来の高等教育による「担い手の育成・確保システムの機能・役割及び拠点」がいかにあるべきか、このことについて、地域の実情に即しつつ、基礎的な検討を試みたものである。そして、「地域の明日は“人づくり”の成否に懸かっている」と言う至極当然のことを、その検討の基本的立脚点とした。
21世紀を目前に控え、いま地域をめぐる環境は大きく変化しつつある。経済の低迷による雇用情勢の悪化、少子・高齢化の進行などを背景とし、住民生活問題の噴出及び経済的活力の衰退が顕著になってきている。また、情報通信のめまぐるしい発達・普及、国際化・国際交流の拡大、産業経済活動のグローバル化などは、個々の地域と世界との距離をますます縮めつつある。このように、地域を取り巻く環境は、大きく変化してきており、地域自らが大きく変わらなければ立ちいかない状況になりつつある。また、高齢化、余暇の増大、高学歴化、社会の成熟化などによる住民意識の高まりは、主体性を持って学習し、活動する住民を増やしている。このような状況に対応し、住民誰もが真に豊かさを実感できる地域づくりに取り組むため、住民誰もが生涯にわたって学習することにより自らの向上を図るために、各地において、人材の育成・確保方策や学習機会提供のあり方が模索されている。
(1) 沖縄の有利性を活かした人材育成の基本的取り組み方向
沖縄は、台風の通過地域、夏の蒸し暑さ、冬の西風の強さなどのマイナス面を差し引いても十分に余りある良好な自然環境、すなわち、黒潮や珊瑚の美しい海、亜熱帯気侯の温暖さなど、海陸とも自然条件に恵まれている。また、沖縄においては、“ユイマール(集落での共同作業)”や高齢者を大切にする風土があるとともに、シマ(郷土、集落)の行事への若者の参加がかなりみられること、困っている人々を共同体で支える習慣、伝統文化や芸能が人々の生活の一部として染み込んでいるとともにこれらの優れた発信地であること、北から南まで多様な地域との交流の蓄積があること等々、優れた風土が今日なお根づいている。