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2 賑わい創出機能

 

(1) 賑わい創出への新潮流

ア 小売商業の新業態創出の動向

我が国の小売商業の動向を探るため、「我が国の小売商業規模の推移」を示す図表3-3で、最近の状況や、特徴的な傾向をみてみる。

バブル期に当たる昭和63年から平成3年には、売場面積の増加は7.7%にすぎず、他の調査時点と比較しても際だって高い伸びになっているわけではない。しかしながら、販売額は22.5%と高い伸びを示し、平成3年の単位面積あたりの販売額は1,280百万/千m2と昭和47年以降のなかでも最も高い値となっている。

つぎに、バブル崩壊後の平成6年及び9年をみてみると、バブル期に大幅に増加した販売額は、前期と比較してそれぞれ1.9%、3.1%と伸びが鈍化している。これに対して、ある程度のタイムラグを持って具体化してくる売場面積の伸び率は、10.7%、5.3%と販売額の伸びを上回っているため、結果として売場面積あたりの販売額は低下傾向にある。商店数は、昭和57年の約172万店をピークにそれまでの順調な伸びから一転減少傾向に転じ、平成6年、9年には対前期比5%以上の減少となっている。

この結果、平成9年の全国の小売商業規模は、商店数約142万店、小売販売額約148兆円、売り場面積規模約128百万m2で、売場面積あたりの販売額(消費者物価指数での補正後−平成9年価格)は、千m2あたり1,153百万円となっている。これは、昭和47年とほぼ同じ水準で、面積あたりの収益力は上がっていない。

以上のことから、現在小売商業においては、各店舗間の競争が激化し、収益性の低い店舗の廃業等の自然淘汰が起こり、小型店の大型店への入れ替えにより大型店舗比率が増加している(1店あたりの販売額の伸び率が店舗面積あたりの販売額の伸び率以上に急増していることから判る)ことが進んでいる。

中心市街地活性化の議論のなかでは、こうした現在の商業環境をオーバーストア(過剰店舗)という言葉を用い、好ましくない状況としている。この見解については議論がわかれるところであるが、ここでは現状をオーバーストアと仮定し、小売商業環境の分析をすすめる。そうした場合、オーバーストアにより新規立地の停止と淘汰が併存する状況が生じ、その結果縮小均衡や勝組が高収益を勝ち取るという形態で小売の商業競争がすすんでいるため、大型店舗比率が増加し、1店舗あたりの販売額が急増しているという表現では現状を言い当てているとは言えない。むしろ、新業態の顕在化、地方都市中心市街地の空洞化問題を引き起こしかねないターミナル・郊外地間の立地間競争、零細小売店とSCの競合等の新しい局面を生じながら、オーバーストアが新規立地継続のもとで淘汰を進展させ、陣取りに向けて“メガ・コンペティション”と称される厳しい競争が継続しているといった方が適切であろう。

 

 

 

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