これをみると、これまでに行政サービスとして対応してきた領域は、1]急病や事故などの緊急時における救急車による搬送、2]デイサービスセンターの基本事業としての施設送迎、及び3]身体障害者(要介護度の高い高齢者を含む)に対する福祉タクシー券の発行や福祉車輌の貸し出し、といった範囲に限られることが理解できる。
近年、これまで行政サービスの対象から外れていたさまざまな外出(移動)ニーズの領域に対して、要支援・要介護高齢者の社会参加を促し、かつADLの改善や悪化防止の観点からさまざまな取組や提案がでてきている。
以下では、このような未開拓の領域に対応するサービス・システムの動向について検討する。
(3) 新規外出支援(移送)システムの概要
ア STSの概念
図表4-13に示した、行政サービスが現在対応していない空白のニーズ領域は、「移動に何らかの制約のある高齢者(障害者)」が「個別、あるいは比較的小人数の合乗りで」、「自宅と目的地間を」移動する、という共通の特徴を持っている。このような移動ニーズに対応する交通手段の開発については、「ノーマライゼイション」理念の浸透・普及の早かった欧米諸国が先行している。
欧米諸国では、こうした交通手段が、スペシャル・トランスポート・サービス(以下、「STS」と称す:障害者や高齢者等の移動制約者を対象とした福祉輸送サービスで、リフトやスロープ、ノンステップ等のバリアフリー車輌が使用されている)と総称されている。