ウ 調理能力の増強/未利用の調理施設の活用
調理能力の増強は、検討課題1]・4]と同様に、自治体財政との兼ね合い次第であるから検討から除外する。
特に食事内容の高度化・多様化への対応能力を問わなければ、未利用の調理施設の候補としては、地区公民館などの公的施設の調理施設(大宮市や東松山市ではすでに「会食」用の食事調理に活用している)、小・中学校の給食施設、特養・老健など保健福祉施設の調理施設のほか、地域内の大小の飲食店、ホテル・旅館・宴会施設まで幅を広げることができる。「不足する食事供給内容との適合性」と「地域内資源の有効活用」の二つの視点から、最適な追加施設を選択すべきである。
ここでは、未利用の地域資源の有効活用の好例として、高浜市(愛知県・人口約36,000人)の事例を以下に示す。
―事例―
地元の飲食店を活用した365日配食サービス(高浜市)
システム構築のねらい:「高齢者の元気を支えるためには、従来の週2回配食を毎日にしたい」「飲食店の活用で商店街活性化にもつなげたい」と平成11年1月スタート。
地元の飲食店組合に呼びかけ、11店舗の協力を得る(食堂、寿司店、うどん屋、中華料理店、弁当販売の八百屋、仕出し兼業の魚屋など)。
サービスの仕組み:各協力店が一週間分の献立を企画し、市の社会福祉協議会がカラー写真付きのメニューを作成して利用者に配布。利用者の希望するメニューは社会福祉協議会が集約して配達当日の朝に各協力店に連絡(注文)。協力店は、ランチタイム後の閑散な時間帯を利用して注文品の調理と配達・容器回収(翌日)を行う。
料金と費用:協力店の収入は1食450円(うち、配達・回収代50円)、利用者負担は1食250円。その差分200円は国・県・市の補助金。
システム変更の効果:利用者は週2回のころの3倍近く、200人余りに増大したが、国庫補助の対象事業となったため、市の負担は40万円増の年間180万円にとどまる。毎日配達・回収することで痴呆の早期発見などの副次的成果も得られた。
北海道幕別町、熊本県甲佐町なども「高浜方式」の導入を検討中。
エ 配達システムの改善・変更
上記(2)検討課題の整理でみたように、このテーマは3]・5]・6]という複数のニーズに対応しているが、ここでは量的な増大への対応(5])という観点はさておき、主に現行のボランティア・システムの持つ不安定性や柔軟性の不足を改善するという観点から代替案を考える。
第1に、ボランティアの主力が主婦層であることから、調理を担当するにせよ、配達を担当するにせよ、利用者の希望の多い「夕食」の配達への対応が難しい点への改善策が必要である。この点では、すでに夕食を軸に実施している大宮市のシステム(宅配時間を少し早める、ボランティアの不足を社協職員が補うなど)から学ぶべき点が多いと思われるが、その他の代替案としては、夕食の配達にも対応できる地域内の人材資源として、高齢者ボランティアの活用や小学校高学年・中学校の児童・生徒の活用など、新たな地域ボランティアの発掘・育成が考えられる。