この場合、異なる移送ニーズに対応するそれぞれの移送システムは、相互に代替関係にあるというよりも、むしろ補完関係にあるとみなすべきであろう。
逆に、「配食サービス」には、これとは異なる形態で同じような機能(=食事という生活機能の支援)を果たし、結果的に代替・補完関係にたつサービスがある。家事援助における調理・配膳サービスや、買い物代行による完成食の購入などがそれである(図表3-5)。事実、前節(3)で示したように、家族形態や健康状態の違いによって、「施設での会食」、「配食」、「食材宅配」、「家事援助(食事の用意)」のいずれを希望するかには明らかに違いがある。しかし、本人の健康状態やADLに応じた適切なサービス形態の選択は、まさしく今後、ケアプランナーあるいは「地域ケア会議」に課せられる課題ではあろうが、本調査の課題の範囲を超えている。したがって以下では、「配食」というサービス形態の範囲内での、改善・代替案の検討を行う。
(2) 検討課題の整理
住民(あるいは現在の利用者)のニーズを類型化すると、以下のようにまとめられる。
1] サービス量の拡大を求めるニーズ(対象者要件の緩和・一日2食化など)
2] 食事内容の多様化・高度化を求めるニーズ(味付け・糖尿病用食など)
3] 配食システムの改善を求めるニーズ(夕食希望・配達時間の希望・配達人の選別など)
他方、供給側でも以下のようなシステムの問題点・課題が認識されている。
4] サービス対象者の線引きの難しさ(日中独居老人など)
5] 供給能力の不足(調理施設の能力不足・配達ボランティアの不足など)
6] 配達システムの不安定性(ボランティアの慢性的な不足・突発的な欠員など)
7] 配達拠点・配達後の安全確保上の懸念(異物等混入・長時間放置による腐敗など)
8] 事業コスト削減の必要性